第8話 崩壊の危機
ある日の事だ。今日は通いのお手伝いさんが休みなので、このような時は時々夫の部屋を掃除するのが日課になっていた。
夫は書類の山なので部屋には入らないでくれと言われているが、それでもだ。余りにも汚かったら黙ってはおれない。
こうして…とんでもない恭介の秘密を知ってしまった美琴だったが、最初のきっかけは何の変哲もない本を誤って落としてしまった事だった。
そして…何と……ブック型金庫の中には美しい女性と恭介が仲良さそうに写っていた。更にはDNA鑑定(父子私的)の結果報告書が入っていて、そこには「親子関係を認められない」と記してあった。更には「DNA鑑定」依頼書のコピーが入っていたのだが、「DNA鑑定」依頼者の欄には木下昇と書かれてあった。
この美しい女性の写真を金庫に隠さなければいけない理由は何なのだろうか?
更には「DNA鑑定」結果報告書の蘭に目を通すと、驚く結果が報告されていた。
【方法】PCR-STR法によるDNA鑑定を行いました。
【結果】木下江梨香は木下昇の生物学的父親として認識できません。
【解析】親子関係を認められません。
「DNA鑑定」依頼者の欄には木下昇と書かれてあった。
美琴はこの依頼書は一体何を意味しているのか、理解不能だ。
そこで木下昇という男を徹底的に調べた。
一か月後興信所で調べた結果が届いた。その結果経歴的にも何の問題もない男で、母の職業に憧れ料理人を志した木下昇は、帝都ホテルの副料理長で国際大会で優勝経験のある凄腕のパテシェであり、1年前に妻の木下静香と離婚していたことが判明。
一体この男と夫恭介にはどのような関わりが有るのか?
そして…この美しい女性が恭介と仲睦まじそうに写っているが、一体どのような関わりがあるのだろうか?
そこで今度は元妻の木下静香を徹底的に調べた。
すると現在は、帝都ホテルの主任パティシエールとして勤務している事が判明した。
まだ、捜査続行中で詳しいことは分からないが、愛する夫恭介との仲睦まじそうに写っている写真を見て、もしや元妻の木下静香と不倫関係にあるのではと心配になり、捜査続行中にもかかわらず取るものも取りあえず駆け付けた次第だ。
早速帝都ホテルに赴き静香という女性を観察することにした。中々顔を見ることが出来なかったが、一瞬だけ見ることが出来た。
(アッ!恭介と仲睦まじそうに写っていた写真の女に間違いない!これは一体どういうこと・・・)
実際見るとさらに美しい。スラリとしたスタイルと、目鼻立ちのハッキリした美しい女だが、誰かに似ていると思った。すると直ぐにその相手が分かった。そうなのだ娘江梨香にそっくりなのだ。
(ええええええええええぇぇええええええええっ!夫恭介が江梨香の「DNA鑑定」依頼書のコピーを持っているという事は益々怪しい。江梨香が恭介の子供である確率は高い。もし……この美しい女静香と恭介の子供であったら、どうしてこの女が江梨香を手放したのだろうか?)
益々疑心暗鬼になる美琴だった。それと同時に現在も不倫関係が続いている可能性も捨てきれないと思い、調査を続行した。
興信所は不倫や不貞行為に関する調査を多く手掛けるが、ただし、過去の不倫調査は現在の浮気調査よりも難易度が高い。
過去の浮気に関する調査は、手がかりや証拠が残っていれば、そこから当時の浮気相手を特定できる可能性があるが、聞き込み調査や潜入調査といった専門的な方法で、過去に起きた浮気の事実関係を確認できる場合もあるが、それでも…現在進行中の浮気調査とは異なり、過去の浮気調査ではホテルへの出入りなどの決定的な映像証拠を得ることが非常に困難だ。
慰謝料請求には肉体関係があったことを証明する証拠が求められるため、静香のスマートフォンに残る連絡先や情報、あるいはカーナビの履歴など、過去の記録も証拠として役立つ場合がある。
現在進行中の浮気調査では、ホテルへの出入りなど、不貞行為を示す決定的な写真や動画を捉えることができるが、過去の不倫ではそのような証拠はすでに失われている場合がほとんど。肉体関係の存在を証明する証拠がなければ、慰謝料請求は困難になる可能性がある。
時間が経過すると、浮気相手との連絡履歴、カーナビの履歴、交通系ICカードの利用履歴など、証拠となりうる情報が消去されたり、新しい情報に上書きされたりすることが多くなる。また、関係が終わってしまっている場合、新たな証拠を得ることができない。
不貞行為を知ってから3年、または不貞行為があったときから20年が経過すると、慰謝料請求権が時効によって消滅する。浮気の事実を知っていたにもかかわらず行動を起こさなかった場合、証拠があっても請求が難しくなる。
恭介と静香が過去に付き合っていた証拠を見つけ出すことが出来るのか?
美琴はこの2人が江梨香の両親でないことを祈るばかりだ。その理由はこの女では太刀打ちできないものを直感で感じたからだ。
🥼💉👩⚕️
江梨香は小学6年生になっていた。
3歳から習っているヒップホップダンスは、教室では小学生ではトップに位置付けられ大会にも多く参加している。江梨香はこのヒップホップダンスをどんなことをしても続けて行きたいと願っている。
ヒップホップダンスの習い事にかかる費用は、小学生の場合、年間でかかる費用は合計で20万円程度が目安だが、上限はない 。
それとピアノ教室の月謝も9,000円から12,000円程度だが、更には発表会や小学生部門のコンクールもあるが、発表会・コンクールの参加費は10,000円程度かかる。更には英会話にも通っているので、週1回のマンツーマンレッスンでは、月額20,000〜25,000円ほどだが、これらの習い事も上限はない。このように習い事には相当のお金がかかるということだ。
それでも…上流階級のお嬢様だ。そんなお金など、はした金。以前は衣装や靴などを先回りして用意してくれていた母だったのに、最近母に習い事の発表会の衣装などの用意を口やかましく催促しても、暴力的な言葉が返って来る。
それが一体どうしてなのか?理解に苦しむ江梨香。
以前はピアノの発表会やヒップホップダンス大会の度に母が言わなくても用意してくれていたのに、最近は大会や発表会が押し迫っているというのに放ったらかしだ。
だから……忙しい父に携帯でおねだりして、用意してもらっているのが現状だ。最近とみに夫婦が仲が悪い事は薄々気づいていたが、原因など分かる訳もない。賢い江梨香は母のことを父に告げ口をしたら、余計に不協和音が生じると思い。愚痴を言わないで我慢しているが、ついつい我慢できず漏らしてしまう。
「お父様最近お母様が……」
「どうしたんだ。私の大切な江梨香。言ってごらん」
「うううん何でもない……」
これ以上家庭が荒れるのが怖くて押し黙ってしまう江梨香。
🥼💉👩⚕️
またこんな事もあった。
「お母様習い事の月謝が振り込まれていないと先生に言われたの。入れておいてね」
「そんなこと言うんだったら、習い事なんか辞めてしまいなさい!」
「何を言っているの。あんなに熱心に通わせてくれたのは、お母様が立派な大人になる為にはしっかりと習い事を続けましょうね!って言ったから続けて来たんじゃないの。それなのに今更どうしてそんなこと言うの?」
「いい加減にしなさい。今は、亜里沙も病状が悪化して江梨香にばかり関わっていられないの」
「それでも…先生から注意を受けたので……私このままだと辞めなければいけなくなるの。辞めたくないの!」
「生意気な口叩かないで!」
”ペッシーン”
思い切り江梨香のほっぺを叩いた美琴。江梨香は悲しくて泣きながらリビングを出て部屋で泣き崩れた。
「どうして……急にこんなお母様になったの?ぅうううっ!わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」
最近の母の態度に悲しみと同時にどうしたら良いか、皆目見当がつかない江梨香だった。
🥼💉👩⚕️
(私はどうしてこんな母親になってしまったのだろうか?あんなに自慢の娘だったのに、だが…私は2人の密会現場を見てしまった。許せる訳がないじゃないの?娘江梨香を見ると、可愛い以前に血が激流して感情が崩壊して、この感情を抑えることが出来なくなるの。そして醜い言葉を思いきりぶつけることで平常心を保つことが出来るのよ。ウゥゥ(´;ω;`)シクシク…)
「お母様私の何がいけないの?ハッキリ言って!」
「フン!言って欲しい?」
そこに父恭介が帰って来た。
「何を言っているんだ。美琴いい加減にしろ!」
「私をこんな風にしたのは……私をこんな風にしたのは……誰のせい?うううっ(´;ω;`)ウゥゥシクシク…」
一体この家庭では何が起こっているのか?
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