第5話 界嵐
桜華は人間界に行く準備をして自分の館に住まわせてくれている伽羅にしばらく不在することを伝えようと伽羅の姿を探す。
伽羅はリビングで軽食を食べながら本を読んでいた。
「伽羅様、ここにおられたんですね」
桜華が声をかけると伽羅が顔を上げて桜華を見る。
「人間界に行く準備はできたのかい?」
「私が人間界に行くことがよく分かりましたね」
桜華が驚いていると伽羅はなんでもないように言う。
「光安から桜華がしばらく人間界に仕事で行くとは聞いてたからね」
「そうでしたか。光安様の言う通りしばらく人間界に行ってきますので留守中のことお願いします」
桜華は頭を下げる。
「ああ、安心して行っておいで。それより人間界には天族を見たこともない人間がいっぱいいる。絶対に天族とバレないようにね」
「はい。気をつけます」
「それと転移門を使う時には特に気を付けるんだよ」
「はい。伽羅様。ではこれから行ってきます」
桜華は一礼すると伽羅の館から人間界に行ける転移門まで急いだ。
普段は消している自分の白い羽を使って飛んでいく。
転移門は開いている時間が決まっている。
今日のうちに人間界に行かねばならない。
(光安様が急ぎの用だと言っていたものね。でも古の神話の神様が本当に存在したのには驚いたけど)
そんなことを考えているうちに転移門にたどり着く。
桜華は自分の白い翼を消した。
そして門番に通行許可証を見せる。
「よし、転移門に入れ」
門番から許可が下りて桜華は転移門を潜る。
すると真っ暗な闇に包まれた。
(これが界と界の狭間ね。あの光っている部分が出口って言ってたわね)
光安から転移門の通り方も教わった。
闇の中一つだけある光に向かって桜華は自分の羽を再び出して飛んでいく。
その時、誰かが声を出した。
「いかん。界嵐が来るぞ。逃げろ!」
桜華がその声を聞いた瞬間、恐ろしいまでの風に巻き込まれて桜華はぐるぐると体が回転するような体験をして気を失った。
「う~ん」
桜華は目を覚ました。
「ここどこ?」
桜華は見たことない森の中の沼地の近くに倒れていた。
「カークお爺さん! どこにいるの?」
頭がボーっとしている。
自分は水を汲みに行ったはずだったのになぜか見知らぬ森にいる。
「カークお爺さん!」
自分を育ててくれたお爺さんの名前を呼ぶが返答はない。
とりあえず自分の知っている森まで帰ろうと歩きだした。
すると沼の中から突然魔物が現れた。
魔物は巨大なムカデのような姿をしている。
そして桜華に向かって大きな口を開けた。
「きゃああああ!!」
桜華は悲鳴をあげてその場に座り込む。
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