第2話 邂逅

準備を整え、ギルド長に言われたギルドの倉庫にやってきた。


「なんだこれ...?」


目の前には箱に入った大量の食材が置いてある。なんとなくだが肉が多く、野菜が少ない様な気がする。


「おう!クライス!来てくれたか」


「ギルド長、この食材って...」


「あぁ、この食材が今回配達してもらう荷物だ」


どう見ても1ヶ月分はある...


「クライス、お前マジックボックスは持ってたか?」


「持ってますけど、さすがにこの量は入りきりませんよ」


「そうか。なら俺のマジックボックスをやる!これなら、この量を入れても満タンにならねぇから。この依頼終わったら、そのまま持って帰りな!」


「そんな容量のマジックボックスいただけないですよ...」


「良いんだよ。手間賃代わりに受け取っときな!それに、この依頼は毎週頼もうと思ってるからよ」


「え?毎週?毎月ではなくてですか?」


「おう!そうだ!この量で1週間分だからよ!ガハハハハッ!!」


この量を1週間で...?化け物じゃないか...


「よし、マジックボックスに全部収納したな。ほれ、これが地図だ。カイゼルシティを西に抜けた所にある森に行ってくれ」


「西の森ですか?あんな所に人が住んでいたなんて」


「昔からの知り合いでな!小さな木造の家がある。見たらすぐわかるだろうぜ!なんせ1軒しかねぇからな!ガハハハハッ!!」


「わ、わかりました...」


「その家にはフレイアって人が住んでる。けっこう用心深い人だから、ついたらザックから頼まれてきたと言え。そしたら出てきてくれるはずだ」


「じゃあ、そのフレイアさんに食材を渡したら依頼達成ですか?」


「そうだ!渡したら、この書類にサインをもらってきてくれ!この書類をギルドに提出してくれたら、クエスト完了だ!その時に報酬も払うからよ!」


用心深いってことは何か訳ありなのか...?


「説明は以上だ!いきなりで悪いが頼んだぜ!俺はこの後、騎士団の仕事があるからよ!これにて失礼するぜ!」


ザックギルド長はこの町の騎士団の団長も務めている。きっと急な任務が入って配達に行けなくなってしまったんだろう。町の平和を守りながらギルドで荒くれ者たちを束ねている。大変な立ち位置だ。


「わかりました。俺も出発しようと思います」


クライスは大量の食材が詰まったマジックボックスを持ち、西の森へ向かった。


     ◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 


西の森に入って、どれくらい時間がたっただろう?

なかなか目的の家が見えてこない。


「地図によると、ここらへんのはずなんだけど…」


本当に道なのか?と言いたくなるような山道だ。草木を分けて奥へと進んでいく...


地図には大きな木の近く!と書いてある。ギルド長、説明が大雑把すぎるよ...


「大きな木ってこれか?」


周りの木とは違い、一際目立つ。とても大きくて立派な木だ。

鳥や小動物が遊んでいる。まるで生命の象徴のようだ。


「やっとついた。ということはここら辺に家があるはず...」


周囲を見渡すと、大木のすぐ横に小さな木造の家がある。


あそこにフレイアさんが...


恐る恐る慎重に家に近づき、扉をノックした。


「フレイアさん、いらっしゃいますか?ザックギルド長の使いで参りました」


反応がない...留守なのか?


「フレイアさん?フレイアさん、いらっしゃいませんか?」


何度かノックをしていると家の奥から声が聞こえた。


「聞こえている。なぜザックが来ていない?」


やっと反応があった!!


「ギルド長は騎士団の仕事が入ったみたいで、変わりに参りました」


「そうか...ちょっと待っていてくれ」


ガチャッとカギを開ける音が聞こえた。


やっと出てきてくれた。はやく食材を渡して帰ろう...

今日は午前中にゴブリンの討伐もしているし、もうクタクタだ...

ふぅーっと一息つき、顔を上げた。


「フレイアさん、初めまして……え…?」


家の中から出てきたフレイアの姿をみてクライスは固まってしまった。

そこに立っていたのは普通の人間ではなかったのだ。


「翼...?」


背中に翼が生えている。しかし右の翼はほとんど残っておらず、左の翼もボロボロだ...

しかも右目には眼帯。右腕は肘から先が無い。


しかし、クライスはそんなことは気にならなかった。

赤くサラサラとした髪、深紅の瞳、そして抜群のプロポーション!!

その美しさに見とれてしまう。


「綺麗だ...」


ハッ!!つい言葉が漏れてしまった!!俺は初対面の人に何を言ってるんだ...!!


「綺麗...だと...??」


「いや、その...はい...」


赤面しながら答えた。


「プッ...アッハッハッハッハ!!初対面でいきなり綺麗だなんてね。嬉しいこと言ってくれるじゃないか。君、名前は?」


「クライスです」


「そうか、クライスか。立ち話もなんだ。上がっていくといい」


「え...?」


まさか家の中に招待されるなんて...!!


「なんだ?嫌なのか?」


「いえ!そんなことないです!お邪魔します」


俺はこの時、知る由もなかった。この出会いが俺の運命を大きく変えていくことになるなんて...

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