荒れ果てた世界で女神様たちとパーティーを組みました!
猫田狐春
第1話 発端
「すみません。査定をお願いしたいんですけど」
「あら、クライス君!お疲れ様」
「こんにちは、アイリさん。すみません。魔石の査定をお願いしたいんですが」
そう言うとクライスは受付のカウンターに魔石を置いた。
「今回のクエストは...ゴブリン3体の討伐ね!すぐ鑑定してくるから少し待ってて」
「わかりました」
今週分の生活費は問題無さそうだ。ゴブリンの魔石1個で普通は金貨5枚。3体分で金貨15枚にはなるだろう。さて今晩は何を食べようか...
そんな他愛のないことを考えていると後ろから声をかけられた。
「おやおや!そこに立っているのはポンコツソロ冒険者のクライスじゃないか!なんだ、またランクの低いクエストの達成報告か?いや~、ソロだと苦労するね~。」
この声は.....
後ろを振り向くと、ものすごく見下した目でこっちを見ている男が立っている。
この町、カイゼルシティの冒険者パーティー『タイタン』のリーダー、アルフレッドだ。
その後ろには女性が3人立っている。
【魔法使い】のジーン、【僧侶】のリリア、【格闘家】のディーネだ。
彼女たちは全員、俺の幼馴染だ。タイタンというパーティーも元々は俺と彼女たちで立ち上げた。
俺たち4人、そして途中で加入したアルフレッドの5人で毎日楽しく過ごしていた。
しかし半年前、俺はパーティーを追放された。
とあるクエストを失敗し全ての責任を無理やり押し付けられ、クビにされたのだ。
その事件以降、ポンコツ、役立たずという噂が広まって誰もパーティーを組んでくれなくなった。
いや、正確にはアルフレッドが噂を広めたというのが正しいか...
「ソロだと高ランクのクエストも受注できないだろう?誰かとパーティーを組んだほうがいいんじゃないかな~。まぁ、もっとも君と組んでくれる人がいればの話だがな!」
むかつく!!
今すぐぶん殴ってやりたいがギルド内での暴力沙汰はご法度だ.....
我慢だ!我慢...!!
「おやおや、どうした?ビビッて言い返すこともできないのかな?ポンコツクライス君は?情けないな~。君たちもそう思うだろう?」
「ホントにね~、、、情けなさすぎて目も当てられないわ。」
「マジでキモイ。この負け犬。」
「こんなやつほっといて早く行こうよ、アルフレッド~♡」
「まぁまぁ3人とも、これでも元仲間だからな。声くらいかけてやらないと」
彼女たちも昔はこんな感じではなかった...!!
きっと冒険をしているうちにアルフレッドに惚れたのだろう。
アルフレッドのことが好きで俺が邪魔だったなら素直にそう言ってくれれば良かったのに...
そうすれば俺も、もう少し楽な気持ちで抜けらたんだぞ...!!
もう...我慢の限界だ...!!このまま1発.....!!
「おい、そこまでにしとけよ、お前ら。ギルド内での暴力沙汰はご法度だって知ってんだろう?」
「これはこれは、ザックギルド長。ええ勿論、把握していますとも。ただ昔からの友人に声をかけていただけですよ」
「アルフレッド、お前いい加減にしねぇと牢屋に放り込むぞ」
「おお、怖い怖い。ですが、お言葉ですが私は悪事を何もしておりません。牢屋に放り込むなど不可能ですよ。」
「ふん、それよりお前らクエストを受注しに来たんじゃねぇのか?」
「あぁ、そうでした。指名依頼が来てると耳にしましてね。それを受注しに来たんですよ」
「ほらよ。お得意様のズーク商会様からの依頼だ。はやく行かねぇと依頼人が待ってんじゃねぇのか?」
「そうですね。我々はこれで失礼します。それでは」
書類を受け取り、ギルドを出ていくアルフレッドは不敵な笑みを浮かべていた。
「食えねぇ野郎だ。それにしてもクライス、よく我慢したな!!」
「すみません。ザックさん。ご迷惑をおかけしてしまって...」
「気にするな!アイリが部屋に飛び込んできた時はビックリしたけどな!ガハハハハッ!」
「そうだったんですか...アイリさん、すみません。ギルド長を呼びに行ってくださったんですね」
「クライス君が謝ることじゃないわ。私たちはクライス君の味方だからね」
「ありがとうございます」
この2人の笑顔をみているとホッとする。半年前の事件の時もかばってくれた。
こうして冒険者を続けていられるのも、この2人のおかげだ。
「それに謝るのはこっちの方だしな。半年前のあの事件...もっと証拠がありゃお前に、こんな思いさせなくて済んだのによ」
「そんなこと言わないでください。俺は2人のおかげで、こうやって活動できてるんですから」
「クライス君...」
「よ~し、しんみりした話もこれで終いだ!」
「そうですね。ご迷惑をおかけしました!それでは俺はこれで.....」
「あ!おいちょっと待てクライス。お前この後、時間あるか?」
「え?まぁ、はい」
「よし!ちょうど良い!ひとつ頼まれてくれねぇか?」
「ギルド長!あの依頼、クライス君にお願いするんですか?」
「うむ!クライスなら信用できるしな!ガハハハハッ!!」
「依頼ですか?」
「そうだ!俺からの指名依頼にしといてやる!報酬は金貨50枚ってとこかな!」
金貨50枚??ソロで受けられる依頼にしては破格の報酬だ!
「魔物の討伐ですか?」
「いいや、違う!!とある人に荷物を運んでほしい!配達任務ってやつだ!!」
「配達??俺、配達任務とかしたことないですけど、、、」
「そんな難しいことじゃねえよ!準備ができたらギルドの裏にある倉庫に来てくれ!!待ってるぜ!!ガハハハハッ!!!」
こんなに報酬が高いんだ。
きっと、かなり重要な物を運ぶに違いない...不安だ...
「クライス君なら大丈夫よ」
そう言いながら笑顔でいるアイリを見て、さらに不安を募らせるクライスであった。
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