逸漣 様の短歌集『鍛高短歌』は、五七五に縛られず、思いきり自由な言葉がきらめいています。色彩と心の揺れが静かに絡み合い、読んでいるこちらもそっと頬を染めてしまいそうでした。
特にお気に入りは、「りんご」の一首で、幼き日の記憶がやさしく胸をくすぐるような作品でした。病気という非日常の中で、祖母と過ごした時間だけが静かに色づいていく――りんご病の頬の赤も、トーストのジャムも、どこか懐かしく温かな余韻を残します。そこに漂うのは、子ども時代の孤独と幸福が同居する不思議な光。
詠み手の逸漣 様のまなざしが優しく、言葉の奥で「過ぎ去った時間への感謝」が小さく呼吸しているようでした。