第22話 芳岡 海さまの作品

企画にご参加ありがとうございました。

参加作品内でのネタ被りをご心配しているように見ましたが、設定が同じでも書き方が違えばいいかと思いますので、今回は大丈夫かと思います。


では、早速……



「いやいや。今回も主演俳優目当てに来たというお客さんは多い。この町一番の役者という君の評判はまた高まるだろう。次の脚本までしばらくゆっくりしてくれたまえ」

→成功している俳優なんですね。


あるのはただ空虚な気持ちだ。

 この町一番の役者、という評判が僕に与えられるようになりしばらくになる。最初は謙遜する気持ちが大きかった。でも、次第にそうではなくなった。

 メイクを落とす時、いつも躊躇する。この舞台メイクは仮面だ。仮の顔だ。外してしまえば誰も拍手を贈ったりしない。

→評価と本当の自分とのギャップがあるんですね。


身分違いの恋に破れる貴族の青年の物語だという。

 脚本を読むだけで観客の盛り上がる瞬間が目に浮かぶ。そして僕がどんな振る舞いをすればそれをさらに高められるかも。

→才能がありますね。


 それは富や地位のためだろうか? きっとそれだけではない。身分を捨てるということは、それまでの人生、家族、友すべてを捨てるということだ。僕が役者になって得たのは名声だけではない。尊敬できる役者仲間、いつも楽しい裏方たち、したたかだけど頼もしい監督。

→単純に「演技と本当の自分」だけじゃなく、劇内容とリンクさせて「身分と本当の自分」を書いていることで広がりが出ているのがいいですね。


「まるで素顔の君が演じているようだ」

 素顔の僕? そんなものがどこにいるのだろう。

→演劇のテーマについてよく考えられている、ということですかね。


 観客は、青年の苦悩を見守ってきた。身分違いの恋が幸せな結末を迎えることは難しいことを、観客たちは現実で知っている。だからどちらを選んでも悲劇だと感じる。

→観客視点があるのも、物語に動きがあっていいですね。


 僕と青年は一つになったかと思ったが、しかし、次第にそれはどこかで離れ、そして僕は気づく。どこに僕がいるかを。

→どうなるのか気になりますね。


「なぜって、この身分も含めて私自身なのです――」

 それは貴族の青年ではなく、ただの僕でもなく、その青年を演じる僕から出てきた言葉だった。観客席は静まる。僕の演じる青年は、想いを断ち切るようにぐっと目を閉じる。沈黙と照明の熱だけが僕の体を浸していく。次の瞬間拍手が巻き起こった。

→アドリブということでしょうか?


 最終公演ということもあり拍手は長く続いた。僕たち出演者はカーテンコールで何度も歓声に応え、ヒロイン役の女優が最後に監督の手をとって舞台の中心へ導き、一番の喝采となった。監督は僕の方を見てちらりと片眉を上げた。僕はとぼけてウインクを返す。

→舞台の様子、演技中の身体の様子が描かれているので、非常に華やかな物語に感じました。



総評


演技と本当の自分というテーマを、演劇の脚本を重ねたのが良かったです。

また、舞台上の書き込みが具体的で、映像美があり、華やかで広がりがあるのも良かったです。


強いて言えばなのですが、テーマに対してストレートなので、繰り返しになるところを削り、読み手にグサっと刺さるシーンがあってもよいかなと思いました。

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