第22話 芳岡 海さまの作品
企画にご参加ありがとうございました。
参加作品内でのネタ被りをご心配しているように見ましたが、設定が同じでも書き方が違えばいいかと思いますので、今回は大丈夫かと思います。
では、早速……
♢
「いやいや。今回も主演俳優目当てに来たというお客さんは多い。この町一番の役者という君の評判はまた高まるだろう。次の脚本までしばらくゆっくりしてくれたまえ」
→成功している俳優なんですね。
あるのはただ空虚な気持ちだ。
この町一番の役者、という評判が僕に与えられるようになりしばらくになる。最初は謙遜する気持ちが大きかった。でも、次第にそうではなくなった。
メイクを落とす時、いつも躊躇する。この舞台メイクは仮面だ。仮の顔だ。外してしまえば誰も拍手を贈ったりしない。
→評価と本当の自分とのギャップがあるんですね。
身分違いの恋に破れる貴族の青年の物語だという。
脚本を読むだけで観客の盛り上がる瞬間が目に浮かぶ。そして僕がどんな振る舞いをすればそれをさらに高められるかも。
→才能がありますね。
それは富や地位のためだろうか? きっとそれだけではない。身分を捨てるということは、それまでの人生、家族、友すべてを捨てるということだ。僕が役者になって得たのは名声だけではない。尊敬できる役者仲間、いつも楽しい裏方たち、したたかだけど頼もしい監督。
→単純に「演技と本当の自分」だけじゃなく、劇内容とリンクさせて「身分と本当の自分」を書いていることで広がりが出ているのがいいですね。
「まるで素顔の君が演じているようだ」
素顔の僕? そんなものがどこにいるのだろう。
→演劇のテーマについてよく考えられている、ということですかね。
観客は、青年の苦悩を見守ってきた。身分違いの恋が幸せな結末を迎えることは難しいことを、観客たちは現実で知っている。だからどちらを選んでも悲劇だと感じる。
→観客視点があるのも、物語に動きがあっていいですね。
僕と青年は一つになったかと思ったが、しかし、次第にそれはどこかで離れ、そして僕は気づく。どこに僕がいるかを。
→どうなるのか気になりますね。
「なぜって、この身分も含めて私自身なのです――」
それは貴族の青年ではなく、ただの僕でもなく、その青年を演じる僕から出てきた言葉だった。観客席は静まる。僕の演じる青年は、想いを断ち切るようにぐっと目を閉じる。沈黙と照明の熱だけが僕の体を浸していく。次の瞬間拍手が巻き起こった。
→アドリブということでしょうか?
最終公演ということもあり拍手は長く続いた。僕たち出演者はカーテンコールで何度も歓声に応え、ヒロイン役の女優が最後に監督の手をとって舞台の中心へ導き、一番の喝采となった。監督は僕の方を見てちらりと片眉を上げた。僕はとぼけてウインクを返す。
→舞台の様子、演技中の身体の様子が描かれているので、非常に華やかな物語に感じました。
♢
総評
演技と本当の自分というテーマを、演劇の脚本を重ねたのが良かったです。
また、舞台上の書き込みが具体的で、映像美があり、華やかで広がりがあるのも良かったです。
強いて言えばなのですが、テーマに対してストレートなので、繰り返しになるところを削り、読み手にグサっと刺さるシーンがあってもよいかなと思いました。
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