第13話 天使のいる場所
家に着くと、ヒロカは目を輝かせながらリビングの床に広げられたおもちゃの山に駆け寄った。
彩音は笑いながらお皿におやつを並べ、寛美もソファに腰かけてその光景を見守る。
「ママー、寛美ちゃん、一緒に積み木しよ!」
「いいよ、ヒロカちゃん」と寛美は膝を折り、彩花の隣に座る。
三人で笑いながら積み木を積み上げ、色とりどりのブロックが高くなるたびに歓声があがる。ひろかの無邪気な声に、彩音も寛美も自然と顔がほころぶ。
夕食は簡単なハンバーグとサラダ。ヒロカは「おいしい!」と笑顔で食べ箸に指し踊るようにおどける。今までの静かで冷たい家ではない、それがヒロカには嬉しいようだった。
彩音は横でそっと寛美の手を握る。寛美は一瞬驚くが、受け止めてしまう。期待して着いてきたと思われたくはないが、でもその通りなのだ。
食後はお風呂タイム。彩音がヒロカをお湯に入れると、寛美もタオルを手にして手伝いながら、二人の間に柔らかな空気が流れる。泡で遊ぶひろかに声をかけ、笑顔を交わす二人。
「ふふ…今日は寛美ちゃんがいて嬉しくて、ヒロカ、もうフラフラしちゃってるね」
「ヒロカちゃん、もう眠いのかな?」
寛美が小さな声でつぶやく。
重い瞼をを必死に開けようとしながらヒロカは
「まだ、遊ぶもん、寛美ちゃんいつまで居られるの?帰る?帰る?」
寛美は微笑み
「もう少しいるよ、大丈夫だよ」
ヒロカはニッコリするとまたフラフラしている。
結局ソファて寝てしまい、彩音はそっとひろかを抱き上げ、ベッドへ。ぬくもりが伝わる小さな背中に、愛おしさが胸を満たす。
「おやすみ、ヒロカ…いい夢を」
「まだ…遊び…たい、ママ…」
眠る寛花の小さな寝息に、二人の胸も自然と落ち着く。
リビングに戻ると、彩音と寛美は並んでソファに腰かけ、静かな夜を共有する。
「……久しぶりね、こうして二人で話すの」彩音の声は、柔らかく、少しだけ甘く震えていた。
「うん……まさか会えるなんて思ってなかった」
寛美の瞳が光り、微かに笑む。
手が触れ合う距離に座り、呼吸を合わせるようにじっと見つめ合う。言葉にしなくても伝わる熱。胸の奥の甘さと切なさが、ゆっくりと、静かに二人を包み込む──。
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