ライバル登場?


しゅんくん!」


 パッと花が咲いたように先輩の顔が明るくなり、若干ハスキーな声も甘くなる。

 嫌な予感がして振り返ると、そこには肉厚な巨漢が立っていた。


「ひふみ、誰だコイツ?」


 男がオレを睨む。あまりに凶悪な人相にぶるりと身体が震える。


「新入生。迷子になってたから助けてあげたんだ~」


 先輩は相変わらずにこにことしていてるが、怖くはないのだろうか?

 男は視線を睨みつける様なものから品定めするようなものに変えたかと思うと──、


「ふーん、新入生ねぇ。まぁこれから頑張れよ!」


 ニカッと笑いバシバシとオレの背中を叩く。


「いっ!」


 あまりの衝撃と痛さに短い悲鳴を上げると、先輩が慌てて男の手を払いのけてくれる。


「ちょっと瞬くん、痛がってる!」


「そ、そんな強く叩いてねーよ」


「もう、瞬くんは先に行ってて!」


 先輩に叱られた男は「へーい」と返事をして隣の講義室へと入って行った。


「ごめんね。……瞬くん、怖い顔してて力も強いけど本当は優しい人なんだ」


 先輩が男をフォローしていることにムッとしてしまう。嫉妬、というやつだ。


「あ、そうそう。名前だったよね」


 先輩は自分の胸に手を置いて歌うように言った。


「2年の花崎はなさき ひふみです。よろしくね」


 ああ、かわいい人はやっぱり名前もかわいいんだなぁ。

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