幼馴染なふたり


 ひふみ先輩はいつもゴスロリ衣装を身につけているのでキャンパス内ではとても目立つ。

 オレはその姿を見かける度に彼女へ駆け寄って、声をかけるようになった。最初は支離滅裂なことしか言えなかったが、数ヶ月経った今ではちゃんとした会話が出来るようになっていた。

 ひふみ先輩は「純平じゅんぺーくん」とオレの名前を舌足らずに呼んでくれてそれがとても嬉しかった。

 だが、喜んでばかりはいられない。



 課題の相談を休憩室でひふみ先輩にしていると、にわかに大きな声が響く。


「ひふみ、ちゃんと先輩やってるじゃあねぇか!」


 ガハッハッと豪快に笑いながらやって来たのは但馬たじま 瞬先輩で、彼はひふみ先輩と同じ2年生だ。


「うん、後輩くんに頼られるのが嬉しくって!」


 ひふみ先輩は照れくさそうに笑うが、そんなかわいい笑顔をオレ以外の男に向けないでほしいと思う。


「まぁあんまり根を詰め過ぎんなよ? ほらよ」


 但馬先輩はそう言うと机の上に缶コーヒーを2つ置く。


「ありがとう瞬くん。ちょうどノドが渇いてたんだ! よく分かったね」


「そりゃあ幼馴染みだからな」


 ひふみ先輩と但馬先輩は幼い頃からの幼馴染みで、保育園からずっと一緒らしい。何とも羨ましい。

 正直2人の組み合わせは“美女と野獣”にしか見えないのだが……。


「それじゃあサークル活動に行ってくるわ。じゃあな、ひふみに柴田しばた


 この野獣はオレにコーヒーを奢ってくれたり、声をかけてくれたりと親切で義理堅い。オレはそんな但馬先輩のことを心の底から嫌えないでいた。

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