さきほど完結まで読了して、面白かったなあ、というのが素直な感想である。
感動した。
とくにラストのもっていきかた。
タグには、すこしビターエンドとあるが、私はビターエンドとは思わない。
映画のラストのような、大河ドラマの終わり方のような。
素晴らしいエンターテイメントを見終わると、そのキャラの人生に思いを馳せて、ぐっと来て、胸が満足感で満たされ、目がうるうるする事がある。
映画でもドラマでも本でもWeb小説でも────。
我々がそこから得たいものは、つまるところ、そういった感動ではないだろうか?
この作品は中華が舞台で、宋、と、国もしっかり実在した場所である。
いろんな地名や小物の名前も、しっかり、中華の名称である。
中華モノを読んだことがない読者には、すこし、難しいのかしら、と1ページめでひるむ事があるかもしれない。
しかし、ひるむ事なかれ。あんまり中華の知識がなくても、なんとなく読めちゃう。最低限の説明はしてあるので。
話の筋は、皇帝からの命令で、失われた宝を求めて、二人の男、〝知〟が冴えたクールツンデレと、腕に覚えがある真っ正直男が旅をする、というもの。
この旅が、次から次へとトラブル続きで、「あらまあ……、どうなっちゃうの、この旅は。無事に目的が果たせるの?」と言いたくなっちゃう。
読み始めたら、面白くて、どんどん先が読みたくなっちゃうはず。
主役の二人は、それぞれ抱えているものがあり。
はじめは相性最悪、と思われた二人が、だんだん心を通いあわせていく姿は、「これぞブロマンス! ひゃっはー!」と読者は膝をうちたくなります。
そして、ラストがいいんだよ。
味わい深い。
ぜひ最後まで読んでほしいなあ。
親従官(武官)・趙景雀は、皇帝の勅命により太史局正(文官)・丁史鳳と共に召集される。皇帝は彼らに、奪われた天文装置「水運儀象台」の所在調査を命じ、敵地への潜入任務を下す。
対立と不信を抱えながらも、互いの信念と宿命を背負い、二人の危険な北への旅路が始まる。
没落貴族の血を引く趙景雀と、理知的な学者・丁史鳳。密命を背負う男たちの絆が、ここから紡がれていく。
中国の南宋の時代を舞台にした物語。
歴史×人間ドラマが本作の一番の魅力だと思いました。
まずは歴史。
中国を舞台にお話を書こうとすると、けっこう漢人文化を中心に書きがち――なのですが、本作は違います。蒙古や蒙古の歴史上の人物が登場。中国の多民族国家らしさがしっかりと描かれ、物語にも織り込まれていています。中国史好きさんは、きっとニヤリとしちゃうはず。中国史を知らない人は、新たな中国らしさを発見できると思います☆
もう一つの魅力、人間ドラマ。
こちらも、すごく中華な人間関係が見れて、おススメ。
メインの二人が少しずつ打ち解け合っていく姿、すごく素敵でした。切ない展開もあるんですが、そこがまた印象的で中国を舞台にしたお話らしい!って思いました。
あと、知らなくても読書体験には影響ないのですが、「呉越同舟」っていう四字熟語の意味を知ってると、ニヤリとできる場面もあります☆
わたし、中国エンタメ大好なんです。だから、最後まで本当に楽しく読めました!
素敵な作品を、ありがとうございました☆ヾ(*´∀`*)ノ
【こんな方向け】
☑青年期の煌めく友情――ブロマンス・バディものが好きな方
☑世界観にじっくり浸れる、骨太な物語を求める方
☑中国史・南宋時代の雰囲気を味わいたい方
【あらすじ】
時は南宋・嘉定帝の御代。
武官の趙景雀と文官の丁史鳳――二人にある勅命が下される。
それは、金に奪われた水運儀象台の現状を確認してこいというもの。
無謀とも言える命を奉じ、二人は遠く金領を越え、蒙古の地へ。
楽天的な景雀と、理知的でツンデレな史鳳。
正反対の二人がぶつかり合いながらも、いつしか強い絆で結ばれていく――。
【おすすめポイント】
☑熱い友情の物語
始めは衝突ばかりの二人が、幾多の試練を共に越える中で互いを理解し、支え合うようになる姿が胸を打ちます。
しかし、歴史の大きな流れは容赦なく彼らに迫り――?
☑骨太の筆致
膨大な史料の読み込みに裏打ちされた、重厚な筆致。
南宋という複雑で変動の激しい時代を、息づくような空気感で描き出しています。
うっかり私は、最終章を新幹線の中で読んでしまい、後悔しました。
この物語は、是非、一人でじっくり落ち着いて読めるところで読んでください。
全てを読み終わった後。
なかなか感情の整理が追いつきませんでした。
「ここ」までの時間が一気に迫り来るようで――。
詳しくは書きません。
読み終わったら、是非第0話を読み返してみてくださいね。