KATTANA!

フライ・シュール

エンカウント

小学校に入学したての時、偶然立ち寄ったポケモンセンターで、ルカリオのぬいぐるみを見つけた。それを見つけた時、すでに実家に帰った時に近い感覚、もっと言えば鮭がどいつもこいつも川に帰る、という習性にさえ身に染みて実感できるほどの感覚があったのを覚えている。当時は言語化できなかったけど、今はそうだと断言できる。




そのときから、ポケモンに一生を捧げることを運命づけられていたのかもしれない。

ランクバトルで相手の伝説ポケモンに交代読みで命中80%の大技を当てて三タテを決めたときは、天国で遊ぶよりも楽しかったのだと今でも信じている。




それでポケモン、それが夢で、ポケモンに入社するために大学に入ったけれども、入ってすぐ、それはとんでもなく高い壁だと知った。競争率があり得ないほど高く、様々な実績や資格を持ってなければ一次選考に通ることはまずないらしい。その日、家に帰ってすぐにピカチュウの枕をぶん投げた。イーブイ柄のパジャマもくしゃくしゃにして捨ててしまった。やけくそになって(元)ライバルの妖怪ウォッチぷにぷにをやりまくって留年した記憶もある。


でも、いつの日だったか、ターミナル駅の飛び出す街頭スクリーンに表示されている何かが視界の端っこに見えた。


 それはポケモンの新作のチュートリアル動画で、ポケモンZ-Aというらしい。ただ、その操作の下手さに僕は気づいたのだ。移動する足取りはおぼつかなく、技選択の四択しかないボタンを押すのも、3秒くらいかかっていた。そこで気づいた。




別にポケモンを造っている人がポケモンを味わい尽くせていないのではないかと。




その日からよし、またポケモンを世界一味わい尽くすぞ、と、またポケモンのぬいぐるみを10万円購入し、その日から昔やってたポケモンのランクバトルを極めるために、大学もまたさぼって一日14時間の特訓に励んだ。でも、単位が足りなくなって、危うく二留は回避できたものの、説教され、さらに両親に学費の支援を打ち切るとさえ言われてしまった。


 それからSNSやポケモン、細々と趣味として続いていた妖怪ウォッチを一旦引退して気を取り直して、必死に授業を受けた。3年生になってようやく卒業に必要な単位を全部とれるめどがついたと思った矢先、徐々に異変が起き始める。3年生になったころは特に何もなかったと思うけども、夏ごろから本格的に始まった。



 まず、講義に出ているすごいお堅そうな教授の語彙が変化した。真剣に、というのが先輩から聞いてた、8年近く変わってない口癖らしいけど、それこそ七月ごろから"本気で"としか言わなくなっていた。


 そして大学では"さや"とか、"変形防止"とか、"金属探知機"などといった単語も聞こえるようになって、疑問を感じながら、でもあまり気にしないようにして単位取りに勤しんだ。


 少しづつ心の中に疑問が溜まっていく中、ある日、家族でリビングに集まって食事をしていると、母がこれまた奇妙な噂?話をし始めた。

「芯一郎、最近ここら辺、建物建築の工事多いでしょ、それなんでなのか知ってる?」

「んー?しらんけど、時代的に有料老人ホームとか、ジムとか、そういうのでしょ」

「それが、なんと盾屋なのよ、盾屋。本当よ、盾屋たてや。二軒も近くに建つらしいわよ?」

「ふーん、盾屋ね、時代的に時代劇とかが流行ってんのかな?絶対そんなわけないと思うけど…」


 時が過ぎ、8月になると、夏季休業の間に大学に金属探知機を設置しようという話になったらしい。大学で金属探知機は結構前のことから話題になってたけれども、だからといってその時は本当になんでそんなに不便になるのかわからなくて、自分のような性格でも社会現象を起こそうかなとも思ったりした。


 夏季休業に入る前日、ようやくもうすぐポケモン対戦に打ち込むことが出来る、といつもよりもボケっとした状態で一番乗りで教室に入って、不覚にもよだれを垂らしながら寝てしまった。焦って目覚め、その後しばらくすると、もう人がいないスペースがないのか女子が隣に座る。そのいつも特定の時間に写真撮らなきゃいけないSNSをしてる女子、謎に大きいリュックで大学に来ている。でもそんなん知らないので授業の開始までまた思いっきり寝ていたら、


その女子の方角から「ガッガガッキーンキーン」

という製鉄所かと思うような轟音が聞こえて、全身が闘争本能に侵されながら、手をグーにしたまま身構え、その方向を向こうものなら、



か、か、角度、を、器用、に、調、整、しな、が、ら、自撮、り、をして、いた、、、、日、本、刀、を、がっ、、ちり、口、に、咥、、え、、て!!!!! (続く)

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