第8話 次は僕?

 電気をつけ明るくなった室内で、兎白とはくの瞳に飛び込んできたのは、言葉を失うほどに残酷ざんこく悲惨ひさんなもの。


 ベッドには痛みを流し息絶えた両親。


 流れる痛みは、ベッドと床を真っ赤に染めていたのである。


 兎白は、真っ赤に染まった手で両親に触れ、何度も「父さん、母さん……」と呼んで、その場に泣き崩れた。


 両親の部屋から出てきたあの人影は、両親を殺したのだ。メイドの佐野は無事であろうか。


 心配になった兎白は部屋を飛び出し佐野の部屋へ行ったが、彼女もまた刺殺しさつされており、鉄のニオイが漂う室内には痛みが飛び散っていた。


 犯人は佐野を殺し、その後に両親、そして2階へと行った。つまり、兎白が部屋で眠っていたならば、両親と佐野と同じ結末を迎えていたに違いない。


 犯人は一体何者か。強盗? いや、おそらく違う。両親の部屋と佐野の部屋は荒らされた形跡などなく、母のドレッサーに置かれた高価なネックレスも奪われてはいなかったのだから。


 では犯人の目的は? 雨宮あめみや家を殺す事だろうか。


 「……助けて、黒也くろや


 佐野の部屋でぎゅっと強くまぶたを閉じ、小さく黒也の名前をつぶやいた。


 コツコツコツ……


 足音が近づいてくる。


 2階へ行ったはずの犯人が1階へ戻ってきたのだと、兎白とはくは恐怖の中、息を殺した。


「……っ⁈」


 突然後ろから誰かの手が伸びて、兎白の口をふさいだ。


 あぁ、もう終わりだ。僕も殺されてしまう。

 

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