第7話 違和感

 黒也くろやの居ない部屋は広く感じ、起きていると彼の事ばかりを考えては苦しくなるもので、兎白とはくはご飯も食べずに、布団を頭まで被って眠る事にしたのだった。


 兎は僕のほうだ。寂しさで死んでしまいそうだよ。


 その夜、二人が幸せそうに笑って生きる夢を見て目が覚め、ふと時計を見るとまだ真夜中の1時であった。


 喉が渇き、眠たい目をこすりながら部屋を出て、階段を下りてキッチンへ。


 兎白とはく静寂せいじゃくな真夜中に、違和感を覚えていた。


 両親も佐野も眠っているのだから、静かなのは不思議ではないが、それにしても何故なぜだかその静寂さが不気味であった。


 聞こえるのは時計の秒針を刻む音だけ。


 カチコチ……


 真夜中にキッチンへ行く事がないから、暗くておびえているだけだと自身に言い聞かせ、キッチンの電気をつけ、お茶で喉を潤した。


 部屋へ戻ろうとした時、両親の寝室から出てきた人影が階段を上がっていく。


 一体誰が両親の部屋から出てきたのか。まさか幽霊⁈心臓がドクンッと強く脈打ち、恐怖のあまり両親を起こそうと、両親の部屋へ歩みを進めた。


 ドアをそっと開けると、鉄のニオイが残酷な現実を知らせているようだった。


 兎白とはくは何がなんだか分からず、鼻と口をおさえ、ベッドで眠っている両親を小声で呼んだが返事はない。


 ポツポツ、ザーザーッ!


 突然の激しい雨音に肩が飛び跳ね、そしてスリッパで歩いている床に違和感を覚える。


 ゆっくりと膝を曲げ姿勢を低くし、おそるおそる手を床に近づけてみた。すると、生温かいものに触れた。


「……何? なん、なの?」


 恐怖心を抱きながら、ドア近くの壁にある電気のスイッチに手を伸ばした。

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