天かす

@satoka2

天かす

「天かす」


天ぷらを調理する際に出る衣の“かす”。

そのサクサクという食感。素朴な汁の味付けに、ひとつ風味のアクセントを添える重要な役割を担っている。


無くても困らないが、

あると嬉しい——そんな代物だ。


しかしながら、この天かす。

「ちょっと遠いけどあの天かすが食べれるなら苦にならない」

「月に一度は、あそこの天かすが食べたくて仕方ない」

……そんな類の、いわゆる主役では、、、

断じてない。


ただ、この功績は、コスパなどを考慮しても間違いなく賞賛されるべきだ。

それにもかかわらず、

付けられた名は「天かす」。

——“かす”とは、あまりに、

あまりに酷すぎるのではないか。


ところ変わって、

同じような役割を持つものが、

私たち人間の世界にもいる。


いつもその場を賑やかにしてくれるムードメーカー。

誰にでも分け隔てなく優しく気遣いができ、イベントなどでは率先して裏方を引き受けてくれる便利屋さん。

話しやすく、よく相談相手に選ばれ、黙って聞き役に徹し、そっと背中を押してあげる。

時には、その人に必要な一言を添えるカウンセラー。


まさに、“居ると嬉しい”一人である。


ただ、その器用さと八方美人さから、知らず知らず敵を作ったり、イマイチ魅力に欠ける一面もある。

こちらもまた、


この人でなければ一生後悔する——

どんな困難、苦境を乗り越えても結ばれたい“赤い糸の人”。


……には、なりづらいらしい。


しかし、しかしだ!

その自己犠牲や優れた同調性は、評価されるべきだと思わないだろうか!


そこでまたあの疑問が生まれる。

この場合、つけられる名は何か?


天ぷらのセオリーでいくと、、

カス人間。


——やはりこちらも、あまりに酷い。

酷すぎて目眩がし、スネを鉄パイプで水平に打たれたような突き抜ける衝撃が走る。


……私は関係者に問いただしたい!

早急に、“天かす”と“カス人間”を調和し昇華させる名を。


そして、それらがその地位を確立し、胸を張って名乗れる——

そんな時代は、いったいいつになったら来るのだ!と。

関係者はどこか‼︎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天かす @satoka2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ