エピローグ
「ヒスイ君!ありがとうございました!それもこれも全部ヒスイ君のおかげです!」
そう言って、エリュシアは深く頭を下げる。とてもきれいな所作で。
「俺はアドバイスしただけで、頑張ったのエリュシア様とルーちゃんたちだよ」
そう言って褒めると、エリュシアはむっと頬を膨らませる。う~ん?もっと褒めるべきだったか?
「…あの、ヒスイ君。ずっとお願いしようと思ってたことがあります」
「お願い?」
「はい、わたくしのことをエリュシア様じゃなくて、”エリィ”と呼んで欲しいですわ」
少しだけ恥ずかしそうに俯きながら小さくそう言った。
こ、これは…前世の記憶が正しければ、本来だったら主人公(※第1章第1話参照)と競い合っていくうちにお互いを認め合い、さっきみたいにエリュシアから”エリィって呼んで欲しい”って言って、そこからさらに仲良くなって恋仲になって…これ以上長くなるから一旦区切ろう。
本当なら俺じゃなくて主人公に言って欲しいってなるはずだった。が、俺が関わったせいでシナリオが少し変わったのか?う~ん…。
「えっと、良いのか俺なんかで」
「はい、ヒスイ君だからです。お願いします…それとも、嫌でしたか…?」
エリュシアが不安そうに、上目遣いでこちらを見上げてくる。
…反則級に可愛い。ランクSS級にも匹敵する可愛さだ。これで断るやつがいたらそいつの正気を疑うレベルだ。
「嫌じゃないよ、むしろ嬉しいぞ、ありがとう──エリィ」
「ッ…はい!…えへへ」
ぱあっと花が咲いた。胸の前で小さく手を握ってずっとニコニコしてる。
可愛すぎん?さすがヒロインだよ。こりゃ人気も出ますわ。
『ウォン!』『ぷにゅ!』
近くにいたルーちゃんとヒーちゃんも嬉しそうに鳴いている。
「そうだ、お前たちも良く頑張ったな。強かったぞ!」
そう言いながら2匹の頭を撫でる。よ~しよしよしよし。
「それでですね、あの、ヒスイ君にお礼したいなと思いまして」
「お礼?別にお礼なんかしなくても「いえ!絶対します!絶対に!」お、おう、そうか?」
勢いがめっちゃすごい。
さっきまでとは打って変わって積極的に迫ってくる。顔が近い、近すぎるよ!
「と、とりあえずお礼のことは分かった。ありがたく受けるよ」
「はいっ!ありがとうございます!」
「でもお礼って何をするんだ?」
「それはですね、その…ですね…」
エリィが少し照れたように視線を逸らす。
「ヒスイ君を…わたくしのお家に招待致しますわ!」
「………………ん?」
?
「もちろん!お父様にもお母様にもすでにお話してですね、育成を手伝ってもらったってお話したらヒスイ君に興味を持ったようでして」
「規模デカくね?そこまでしなくても」
「い、いえ!それに、是非一度お会いした、と!」
キラキラに期待に満ちた目でこちらを見つめてくる。
「わたくし、ヒスイ君に助けてもらったこと、とても嬉しかったんです。だから、お礼はちゃんとしたいんです」
まっすぐな瞳に射抜かれて、思わず息を呑む。
お家ってことは王城に行くってことだよな!?
俺、平民。エリィ、王族。やべぇ正装とかって持ってないぞ?そもそも平民が行っても平気なのか?
「ヒスイ君…お願いします。ヒスイ君に来て欲しいんです」
うっ!また上目遣いでッ!だが!さすがに王城に行くのはちょっと引かれる。ここはしっかりと断りを──。
「ヒスイ君…」
「行くよ」
無理!行くよぉ!
「ッ…!ありがとうございます!嬉しいです!」
良い笑顔ですね、破壊力がすごいです。あ、僕は好きですよ。
「では、後日改めてお迎えの馬車が参りますのでよろしくお願い致しますわ!」
だから!規模が!デカいって!
そしてエリィは軽くスカートをつまみ、優雅にお辞儀をしてくる。
「それではヒスイ君、また明日ですわ」
「ああ、うん。またな、エリィ」
エリィはルーちゃんとヒーちゃんを連れて、嬉しげな足取りで去っていく。
やっぱりヒロインって感じだったな。オーラが凄いんだオーラが。
そして、残された俺はというと……。
「…王城に行くのか、家族が何て言うかな…」
現実を受け入れたいけど全然追いつていなかった。
とりあえず、粗相のないようにだけはしようと心に決めるヒスイであった。
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