閑章 初めての王城

プロローグ

 ──数日後の休日。

 俺は今、”王族専用の馬車”の中にいる。

 もうねえ、見た目が凄いんだ。なんであんなキラキラしてん?王家の紋章もデカデカと載ってたし、内装も凄いぞ?ふかふかの座席と絨毯、めっちゃ質が良い。

 俺みたいな平民が乗っちゃって良いんかな?ちなみになんだけど、俺の今の服装は学園の制服を着ている。下手に着飾るよりかは良いかなって。


「ヒスイ君、本日はご予定を空けていただき、ありがとうございますわ」


 俺の真正面に座っているエリィがにこっと微笑む。

 いつもの学園の制服姿ではなく、大人びた純白のドレス姿。

 制服姿も良いが、ドレス姿もとても良きです。僕は好きですよ。


「いや、えっと、大した予定なんか無かったから大丈夫だよエリィ」


 緊張のあまり体調崩して行けなくなったとかなくて良かったよ。まあ緊張しすぎて寝不足なんだけどね。


「それは良かったです!わたくし今日という日を楽しみで楽しみて…昨日はほとんど眠れなかったんです」


「いやちゃんと寝ろよ」


 思わずツッコんでしまう、エリィは頬を膨らませて、でもそのあと照れて目を逸らした。


「…だ、だって…。ヒスイ君をご招待するって、いろいろと考えてたら…その…」


「その?」


「…胸が、どきどきしちゃいまして、寝付け…なくて…」


 めちゃくちゃ恥ずかしかったのか、エリィは慌てて両手で自分の頬に手を当てる。


「……」


 …可愛すぎひんか?耳まで真っ赤になってる。

 クソッ!こういう時なんて言ったらいいんだ!女性経験のない俺には前世の知識があっても無理だ!

 何かを言おうと考えていたその時、ガタンッと馬車が大きく揺れる。


「きゃっ!」


 エリィの体がふわっと浮き上がった。

 咄嗟の判断で俺はすぐ立ち上がり、エリィの腕を引き寄せる。


「危ない!」ぎゅっ!


 気づけば、エリィの細い身体を両腕いっぱいに抱きしめていた。

 柔らかくて、軽くて、女の子特有のいい匂いが──

 待て落ち着け理性を保つんだ俺耐えろ耐えろ、うわ顔近っ!可愛い。


「ヒ、ヒスイ君…」


「えっと、エリィ、大丈夫か?怪我は無いか?」


「は、はい…大丈夫です…」


 エリィが俺の胸にしがみついたまんま固まる。

 離れようにもエリィが俺の服を掴んだままでいる。俺も俺で意識は離れようとしてるけど体が動こうとしない。どうしたらいいんだ?


「ヒスイ君…あったかい…」


 不味い!俺の!理性が!えぐい!(語彙力)


「…す、すまんエリィ。そろそろ離れてくれないか…?」


「…あ!え、えとえと、はい!」


 慌てて俺の服から手を離し、ぱっと身体を離した。

 けど、相当恥ずかしかったのか、動きがぎこちないし、顔も耳も赤くなっている。

 俺も心臓がずっとバクバクしてる。きっと俺もエリィみたいに赤くなってるはずだ。


「…お見ぐりゅ…あうっ、ご、ごめんなさい!」


 恥ずかしさのあまり噛んでしまい、さらに顔を覆って縮こまってしまった。

 ドレスの裾をぎゅっと握り、ぷるぷる震えて俯いて、…可愛いが大渋滞している。


「お、落ち着けエリィ。俺は大丈夫だから、な?」


「~~~っ!いっ、今のは忘れてくださいませ!!」


「え?えっと、わかった。忘れるようにするよ…多分」


 絶対無理だと思うけど。


「むぅ~、忘れって言ってますのにぃ…」


 頬を膨らませて抗議してくるエリィ。うん。可愛い。


「…あの…ヒスイ君…」


「ん?」


「…さっきの…ことですけど…」


さっきの抱きしめてたこと?」


「…すごく…うれしかった、です…」


 言った瞬間、エリィは自爆したように両手で顔を隠した。


「今のも忘れてくださいませ~~~っ!」


「…」


 今日の出来事は一生忘れないだろうなと思うヒスイであった──






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

主です。

のんびり書いてこうと思います。

エリュシア様は可愛い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る