第8話 ☆エリュシア 模擬戦

〔エリュシア視点〕


 わたくし、エリュシアはヒスイ君の指導のおかげでルーちゃんが強くなりました。

 そして今日、わたくしの模擬戦の日、これまでのことを活かして全力で挑みます。

 でも、うぅ~…とっても緊張します…。手が震えてきました…。

  ルーちゃんの毛並みを撫でながら、なんとか落ち着こうと深呼吸。


「大丈夫、大丈夫ですわ…。よし!行きますわ!」


 ルーちゃんが『ウォン!』と鳴く、まるで励ましてくれているよう。

 少しだけ勇気を頂いた。いつの間にか緊張は吹き飛んでいた。


「今回の審判も、このマッシが務めさせてもらうね。使用モンスターは3匹までだから、注意してね。では、これより、対戦を開始する」


 先生の声に促され、わたくしは足を前へ出す。

 模擬戦相手の女子生徒も同時に前に出て、モンスターを繰り出す。


「頑張って『小熊兵』!『ウーパーシスター』!」


『グウー』『ウパッ』


 出てきたのは、剣と小盾を持ち、軽鎧を着た茶色いデフォルメ化された小熊に、修道服のような紺色のローブを着た薄桃色の両手杖を持ったウーパールーパーです。

 とても可愛いですが、これは模擬戦、集中しなくてはいけません。


「『ルーちゃん』!『ヒーちゃん』!お願いします!」


『ウォン!』『ぷにゅ!』


 ルーちゃんが鋭く地面を蹴り、ヒーちゃんはぷるんと体を震わせながら、前へと跳ねる。

 この日の為にヒーちゃんも一緒に育成してきました。


「──それでは、始め!」


 見ていてくださいヒスイ君、あの頃のわたくしではなく、今のわたくしを!


「ルーちゃん最初は『オールマジックアップ』です!」


『ウォ~ン!』


 味方全体の賢さを上げます。ヒーちゃんは回復メインですので、ちゃんと恩恵もあります。相性バッチリです。


「続けてヒーちゃんはルーちゃんに『シールド』です!」


『ぷにゅ~!』


 さらにルーちゃんの防御力も上げていき、場を整えていきます。

 よし、ここまでは順調ですわ。


(なんだか…ヒスイ君と似たような戦法ですわね)


 最初にバフを重ねて、盤面を整えて戦う──ヒスイ君の基本となる戦術。


「小熊兵攻め込んで!『疾風斬り』よ!」


『ガアー!』


 小熊兵は風を剣に纏い、一気に距離を詰めてくる。

 研ぎ澄まされたその剣技は、ルーちゃんを狙い、直撃する。


『ウォッ!?』


 小熊兵の斬撃をくらい、ルーちゃんの体が少しだけ後退する。

 けれど、これぐらいじゃまだ倒れません。ヒーちゃんの『シールド』がしっかりと効いています。


「ヒーちゃん、ルーちゃんに『ヒール』で回復、ルーちゃんはさらに『オールブレイブ』です!」


『ぷにゅ!』『ウォン!』


 ヒーちゃんは体をぷるぷると揺れ、さきほど小熊兵から受けた傷を癒し、そしてルーちゃんは天に向かって吠え、味方全体の攻撃力を上げる。

 これで整いました。さあ、ヒスイ君から学んだことを活かす時が来ました。


「舞台は整いました。ここからは攻めの時間です!」

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