第5話 VSヴォルセイバー戦

 次の瞬間、ヴォルセイバーが跳ね上がり、突進してきた。

 津波のような衝撃波が地面を薙ぎ払い、砂浜ごと吹き飛ばしてくる。


「どどどどどどどうしましょうヒスイ君!?」


「安心しろエリュシア様。こっちはタンクのスペシャリストがいるんだから」


『ピキッ!』


 メタルンが瞬時に皆の前に飛び出す。


「メタルン耐えれるよな!『みがわり』!」


 その小さな体が信じられないほどの重圧を放ちながら、迫る水流を真正面から受け止めた。


 ──ドゴォォォォンッッ!!


 轟音とともに大量の海水が弾け飛び、無数の水滴が豪雨かのように降り注ぐ。

 しかし――メタルンは一歩も退かない。


『ピキピキッ!』


「イエス!さすがメタルンの防御力は伊達じゃないぜ!」


「す…すごい…っ!あの技を全て受け止めちゃうなんて!」


「今のうちだ、カンムリもういっちょ『ギガボルト』!ルーちゃんも攻撃してくれ!」


「はい!カンムリさんを見習って、ルーちゃんも『ボルト』です!」


 ルーちゃんの体に淡い雷光がまとわりつき、ふわりと毛並みが逆立つ。

 カンムリの放つ魔力と共鳴し、空気がビリビリと震えた。


『ぷるっ!』


『ウォォォン!』


 青白い閃光が重なり、雨粒を貫きながら一直線にヴォルセイバーへと奔る。

 海面が一瞬だけ真昼のように輝き、次の瞬間、爆発音が轟いた。


『ガアアアアアァァァァッ!!』


「効いてる効いてる!…これもしかしてワンチャンいけるかもしれないか…?」


 ヴォルセイバーは苦しげに体をのけぞらせ、海水を撒き散らしながらもまだ立ち上がっていた。

 その巨体を見上げながら、俺はふとエリュシアの方を見る。


「エリュシア様!」


「なんでしょうヒスイ君!」


「あいつに向かって【契約術】を使ってくれ!試してほしい!」


「えっ!?あんな強敵に【契約術】をですか!?」


「ルーちゃんの配合先としては申し分ないし、それにスキルも悪くないんだ!頼む!」


「…っ、わかりました!」


 エリュシアは一瞬だけ息をのむと、すぐに表情を引き締めた。

 ルーちゃんが『ウォン!』と吠え、彼女の横に並ぶ。


「いきます!【契約術】!」


 エリュシアは胸元のペンダントを握りしめ、両手を前に差し出し、契約魔法を展開する。

 うっすらとした魔法陣がヴォルセイバーの真下に展開され、逃げ道を塞ぐように光の縄が走った。

 魔力コードが食い込み、身体が小刻みに震えながら光に包まれる。


『グルゥゥゥ……』


 ヴォルセイバーが低く唸り、海水を撒き散らしながらも徐々に動きを止める。

 光の縄が体を包み込み、魔力コードが深く絡みつくと、巨体がゆっくりと沈み込むように鎮まった。


 エリュシアの魔法陣がさらに輝きを増し、彼女の手から青白い光の波動が放たれる。

 ルーちゃんが足元で『ウォン!』と小さく吠え、契約の瞬間を応援するかのようだ。


「……っ、あと少し!」


 潮風が舞い、砂粒と水滴が光に反射してきらきらと舞う。

 ヴォルセイバーの瞳が揺れ、やがてその色が柔らかく変わる。


★契約成功!

『ヴォルセイバー』が仲間になりました!


「――契約、成立ですわ!」


『ゴオォォ……』


 巨体のサメが頭を垂れ、仲間として認めてくれたようだ。


「おめでとう!これで一歩前進だな!」


「ひ、ヒスイ君のおかげですっ! でも……本当に成功するなんて……!」


 めちゃくちゃ賭けに出てみたが上手くいったようだ。ヴォルセイバーを攻略したことだし、俺の目的を果たすとしよう。

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