第6話 ヒスイの目的

「ヒスイ君!本当にありがとうございます!これでルーちゃんはもっと強くなれます!」


 勢いよくお辞儀をするエリュシアに、俺は微笑みを返す。


「良いんだよ。それに、これで俺の目的はほぼ解決したようなもんだからお互い様だよ」


「そういえば、効いてなかったんですけど、ヒスイ君の目的はなんでしょうか?」


 エリュシアがきらきらした目で俺を見上げる。

 その横でルーちゃんが『ウォン!』と軽く跳ね、期待を膨らませている。


「この先にある洞窟があるんだけど、そこに『あるアイテム』があるんだ。それが欲しくてここに来たまであるんだ」


「『あるアイテム』…ですか?それはいったいどういった代物でしょうか?」


「まあ見てからのお楽しみってことで」


 そう言いながらヴォルセイバーがいた先の洞窟に足を踏み入れる。

 岩肌に当たる光が、淡く青白く反射して神秘的な雰囲気を作り出す。 


「……ここ、ちょっと神秘的ですわね」


 エリュシアが少し身をすくめながらも、興味津々で俺の後をついてくる。

 ルーちゃんも足元で小さく跳ね、洞窟内の湿った空気に鼻をひくつかせている。

 俺はふと、頭の中で前世の知識を思い出す。確かこれをこうしてこうすれば(思いっきり前世の知識)。

 少しすると、洞窟の奥に光り輝く豪華な宝箱が姿を現した。


「み、見てください!宝箱!宝箱がありますわ!」


 金属の装飾が施されたその箱は、ただ置かれているだけで圧倒的な存在感を放っている。

 思わずエリュシアの目が輝く。ルーちゃんも興奮気味に跳ねる。

 俺はそっと宝箱の前に立ち、深呼吸を一つ。


「俺の記憶が正しければここにあるはず…開けるぞ」


 パチン、と宝箱の蓋が開く音が洞窟内に響き、眩い光が辺りを包み込んだ。

 宝箱の中身は、俺が欲していた物が鎮座していた。


「あった…あったあった!『メタルパスポート』だ!」


 説明書きもしっかり確認する。良かった、本物ようで一安心。


「『メタルパスポート』…もしかして《メタル地帯》に行けるって噂のあの!?」


「そう!まさにあの《メタル地帯》に行く為のアイテムだよ!…まあ、1日1回1時間しか使えないっていう条件付きだけどね」


「それでも十分すごいアイテムですよ!確か普通に買うと何千万Gゴールドするとかしないとかって聞きました」


「取りに来て正解だったなマジで!?」


 エリュシアが手に持った『メタルパスポート』を嬉しそうに眺め、ルーちゃんも小さく跳ねて喜ぶ。

 俺もつい笑みがこぼれ、海辺の潮風が頬をそっと撫でた。


「よし!これで育成が一気に進められるな!今日は帰って明日から一緒にレベリングだ!」


「はいっ、楽しみです! ヒスイ君、一緒に頑張りましょう!」


 俺達は今日は一旦帰還し、明日に備えて英気を養うことにした。

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