機兵

『量産型機兵』との戦いを終え、私たちは『リンク』を解かずに元となった物について話し合う。美生は『量産型機兵』の残骸に座りこみ、私と香里奈は向かい合って話し合う。


「それで? その『機兵』と言うのは一体何?」

「あぁ、『機兵』とは、核を保有する国のうち、7カ国が持つと噂されている最新の核兵器だ。通称『核融合炉搭載型自立歩行最終決戦兵器』略して『機兵』だ。こいつらは自立したAIと核融合と言う無尽蔵とされるエネルギーを持つとされている。まさに現代の『歩く核兵器』だな」

「『歩く核兵器』……。それでは、もう核ミサイルは時代遅れってわけね」

「そうだな。だが、不可解なのはそれだけじゃない。こいつらは誰が設計したかはわからないらしいんだ。それを7カ国はそのままに製造し、いつか来る『世界大戦』に備えているようだ」


 香里奈の言葉に、美生は立ち上がる。


「『世界大戦』!? それじゃ、こいつらが動いたら、世界は滅亡するって意味よね?」

「あぁそうだ。私の元に来ているのは、あくまで軍事ジャーナリスト共の噂程度だ。厄介なのは、これがかなり機密に情報封鎖されていると言うことだ」


 香里奈の言葉に、翼は遠隔で『機兵』についての情報を表示させる。そこに記されていたのは、『機兵』にまつわる軍事ジャーナリストたちが必死に集めた情報だった。


「こいつらは、人、AI、機体という三つの物で形成されている。あれが作ったのは、そこから『人』の要素を排除した物だ。本来の『機兵』は、その三つで出来ている。だが、それはあくまで信憑性に欠ける情報だ。実際のところ、誰も本出を知らないんだ」

「厄介なものね。これでは、いつ世界が滅んでもおかしくないわ」


 私は、それを見て呆れる。これはあくまで噂を元に作られた情報なのだ。真相は未だ闇の中にあり、あくまで一つの情報でしかない。それほどまでに、厳重なまでに情報を封鎖をしないと、懐につけ込まれるような兵器なのだ。


「それと、これは私の伝手のジャーナリストからの情報だ。こいつらは『非核三原則』に抵触しないらしい。それが軍事ジャーナリストたちの頭を悩ませている要素だそうだ」

「『持たず 作らず 持ち込ませず』。それが『非核三原則』の提唱よ。それが抵触されないのは、その『人』の要素がということになるの?」


 美生の質問に、香里奈は答える。


「その通り。『機体』なら『核兵器』として分類される。だが、『人』ならどうだ? 『人』なら『核兵器』とはならないんだよ」

「それじゃ、いつでも『機兵』を、『核』を撃てると同義じゃない!?」

「あぁ。ここ最近、ネットワークの規制が厳しいのはその影響だろう。それほどまでに、報復を恐れているんだよ」


 香里奈の言葉に私と美生は絶句する。どうやら、私たちは踏み込んではいけない領域に踏み込みつつあるらしい。


「どうやら、敵はこの情勢を裏で操っている奴みたいね」

「えぇ。でも、そいつをどう探し出すの? 今のままじゃ何も出来ないわよね」

「確かに、今の私たちでは打てる手段がない。なら、そいつが直々に出ざる負えない状況を作るしかない。無謀だけど、手探りでやるしかないわ」


 私の問いに、香里奈は安心したかのように微笑む。


「まぁ、美羽の言う通りだ。ないなら作るしかねぇ。そうだろ?」

「えぇ。改めて協力してくれる、香里奈? あなたの力が必要なのよ」

「当然だ。一人で動くよりは効率がいい。よろしくな、美羽」


 私と香里奈は、互いの手を握り握手する。すると、不機嫌そうな顔をした美生が、私たちのところに向かう。


「誰か忘れてないかしら?」

「さぁ? テメェのことなんざ逐一覚えてられっか」


 香里奈が挑発すると、それに乗った美生が『ゲイボルグ』を展開する。


「相変わらずの減らず口ね! 今日と言う今日は決着をつけてあげる!」

「望むところだ! 二度と言い返せないようにしてやるぜ!」


 お互いの『ウェポン』を構えながら、美生と香里奈は喧嘩を始める。呆れながら、私は渋々二人の喧嘩の仲裁に入る。


「はいそこまで。喧嘩は程々になさい!」


 私が割って入ると、二人はお互いの『ウェポン』を収める。やれやれと思いながら、私たちはPCを経由しながら、翼の待つ30階へと戻るのだった。

 30階へと戻り、私たちは『リンク』を解除する。私たちは立ったままだが、香里奈はバランスを崩す。


「はぁ。戻ると足が動かなくなるのはやっぱり不便ね」

「仕方ないよ。でもリハビリはしないんでしょ?」

「これでも生きられるのなら、安いものよ」


 美生は香里奈を車椅子に乗せる。時刻は15時を過ぎたところだ。時計を眺めてると、同じく『リンク』を解いた翼が入ってきた。


「皆様、お疲れ様です。疲れにはこれを飲んでください」

「これは一体?」

「コーラよ。『ブレイバー』として動いた後は、甘味が一気に摂取できるコーラがいいのよ」


 私は瓶で持ってきたコーラを飲む。確かに、頭をフルスロットで動かした後に飲むコーラは格別という物だ。


「やっぱり、『ブレイバー』になった後に飲むコーラは格別だね。糖分が頭に染み込むよ」

「意外とありね。冷えてるのもまたいいわ」


 私たちはコーラを堪能しながら、時間を過ごす。

 こうして、疲れた体と脳を癒しつつ、私たちはしばらく休息を取るのだった。

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