ギリシア・コード
各々が『アバター』と『リンク』し、『量産型機兵』と相対する。小規模のホールほどに広い地下格納庫で、人間の数倍大きい機械の体との戦闘が開始される。
「さすがに、これほどまで大きい相手は初めてね。こんなのが出たら、どれだけヤバいことか」
「よそ見してる時間はないわ。さぁ、来るわよ!」
『量産型機兵』は雄叫びを上げながら、太く発達した拳を振るう。私と美生は咄嗟に避けるが、その一撃でクレーターが形成される。
「こいつ、思った以上に強力だわ! 量産型とはいえ、ここまでやるなんて」
「どうやら、悠長に戦ってられないわね。それに、あの装甲、相当上物ね」
ウィングユニットを羽ばたかせながら、『量産型機兵』の弱点を観察する。すると、香里奈は地上から『ウェポン』を展開し、『量産型機兵』の攻撃する。
「『ギリシア・コード【Λ】』。その機体ごと、鉄屑にしてやるぜ!」
香里奈は炎を纏った巨大な鏡のような『ウェポン』を肩に背負い、ロッドのような『ウェポン』を振るう。すると、辺りが炎に包まれ、『量産型機兵』に襲いかかる。
周囲を焼きつくほどの炎が、辺り一面に放たれる。しかし、それでも『量産型機兵』は倒れることはない。
「量産型とはいえ、さすがは『機兵』だな。奴め。ここまで資金を持っていたとはな」
「これはあなたがやったの? 凄まじい炎ね」
香里奈はロッドを肩に背負いながら、私に自らの『ウェポン』を見せる。
「私の『ウェポン』、『ヤタノカガミ』は見ての通りこの巨大な鏡で焼き尽くす代物だ。まぁ、『ギリシア・コード』を使わんと意味がないがな」
「『ギリシア・コード』? それは一体何?」
香里奈は溜め息をしながら、彼女の能力について話す。
「やれやれ、まずはそこからか。いいか? 私ら『ブレイバー』の『アバター』には高度で自立したAIとは別に、プログラムが存在する。そのプログラムこそが、『ギリシア・コード』だ。『ギリシア・コード』には、それぞれギリシア文字に割り振られた能力がいくつか存在する。私が今使ったのは、【Λ】のコードだ。こいつは、『ソーラー・エネルギー』という所謂火属性の能力を自在に操るコードだ」
香里奈は淡々と『ギリシア・コード』について話し出す。ウィンドウには、ギリシア文字の【Δ】が表示されており、これが『ギリシア・コード』と言うものらしい。
「これだけじゃねぇ。『ギリシア・コード』は1つしか持たないやつもいれば、2つも持ってるやつもいる。私は、その類の『ブレイバー』だがな」
そういうと、香里奈は『ヤタノカガミ』をロッドと連結させる。
「『ギリシア・コード【κ】』。太陽の女神の名に反する氷の力で、砕いでやる」
「姿が変わった?」
「これが私のもう一つの『ギリシア・コード』、【κ】だ。ご覧のように、私は【Λ】と【κ】の二種類を持つ。遠距離の
香里奈の言葉に、美生は反応して接近する。
「誰が駄犬よ! この屁理屈女神!」
「あぁ!? 誰が屁理屈だ! この引きこもりが!」
「言ったわね!? 今日と言う日は決着をつけてやるんだから!」
「上等だ! テメェより先にあのデカブツを壊してやらぁ!」
香里奈と美生は誰が『量産型機兵』を倒すのかを競い始めてる。どうやら、人間の頃とは違い、『ブレイバー』になると犬猿の仲になるそうだ。
「さて、私も行くとしますか」
二人が『量産型機兵』を相手にしている合間に、私は『量産型機兵』の懐に入り込む。
「『ギリシア・コード【γ】。モード:パニッシュメント』」
武闘家のような格好に変わり、モーターのついたナックルで『量産型機兵』の脚部を殴る。すると、片足を殴られた『量産型機兵』は、体制を崩し始める。
それを見ていた二人は、驚きを隠せないでいた。
「なぁ!?」
「嘘でしょ!?」
「全く。喧嘩してる暇があるなら、さっさとやるわよ」
二人は私の周りに集まり、私は二人が聞こえる範囲で指示を出す。
「香里奈は右を、美生は左をお願い。正面は私が行くわ」
「危険よ。それじゃ美羽の負担が大きいじゃない?」
「いや、私が囮になる。どうやら、脚部に負荷をかければ、こいつは弱まるはずよ。私が前に立つから、二人は脚をお願い」
私の指示に、香里奈と美生は『量産型機兵』の脚部に向かって接近する。
「この一撃は重いぜ? 覚悟しな! 『κ・フィスト』!」
「『Ζ・コアブレイク』!
お互いの『ウェポン』を阿吽の呼吸の如く息の合った攻撃を繰り出す。すると、『量産型機兵』は脚部を崩され、その場に倒れ込む。そして、雄叫びの如く、咆哮を上げながら体のバランスを崩した。
「やるじゃない」
「お前もな」
二人はお互いを称賛するように、目を合わせる。そして、私はモーターのついたナックルで、『量産型機兵』の胴体に向けて拳を振るう。
「『γ・ストライク』!」
モーターが加速し、螺旋状の回転を纏った拳を振るう。すると、『量産型機兵』は咄嗟の判断で私の攻撃を掌で防ぐ。しかし、私の一撃をそれを上回る加速で防いでいる掌を破壊する。
「『ギリシア・コード【α】。モード:ブレードダンサー』」
『正宗』を携えて、『エネルギーブレード』と共に、連続した剣技を『量産型機兵』に繰り出す。
「斬り刻んであげる! 『α・ランブル』!」
『正宗』による剣撃と『エネルギーブレイド』の追撃により、強固な『量産型機兵』の装甲を斬り刻む。その隙を突くように、香里奈は姿を変えて胸部に接近する。
「『ギリシア・コード【Λ】。
熱を帯びた『ヤタノカガミ』を『量産型機兵』の胸部に近づける。
「太陽の熱で溶かしてやる! 『Λ・シュート』!」
太陽の熱を帯びた炎の球体を、『量産型機兵』の胸部に放つ。すると、『量産型機兵』の胸部は熱で溶け、コアと思われる箇所が露出した。
「あははは! 締めは私のものね!」
香里奈がコアを露出させたタイミングで、美生が『ゲイボルグ』を構える。
「手向けとして受け取りなさい。『Ζ・ストライク【ブルショット】』!」
遠距離から『ゲイボルグ』を放つ。すると、『ゲイボルグ』がコアを貫通し、『量産型機兵』が再び雄叫びをあげる。そして、『量産型機兵』の機能は停止し、その場で動かなくなる。
「やったわ! これでこのデカブツは動かなくなったわ!」
美生がそう喜んでいるのも束の間、『量産型機兵』は一瞬機能する。すると、美生に向かって頭を突き出し、美生を口で喰らう。
「え?」っと美生は咄嗟のことでその場を動けない。その刹那、私は『正宗』を『量産型機兵』の首を斬る。
「危ないところだったわね。大丈夫?」
「えぇ。ありがとう。助かったわ」
「たく、油断しやがって。それより、佐々木はどうした?」
香里奈は佐々木を探すが、どこにも見当たらない。すると、通信が入る。
『皆さん、聞こえますか?』
「翼か。佐々木はどうした?」
『それが、逃げられたみたいです。瀬戸内グループのデータベースにも、彼の情報はなかったです』
「あの野郎、ここまで用意周到とはな。今度会ったらとっちめてやらぁ」
二人は通信越しに、佐々木について今後のことを話し合っている。そして、私はそこに割って入り、『量産型機兵』について香里奈に聞き始める。
「香里奈。『量産型機兵』について、何かしていることはないの?」
香里奈は私の質問に答える。
「いいぜ。一緒に戦った恩だからな。こいつについて、知っている範囲は話してやるよ」
私たちは、お互いの『ウェポン』をしまう。こうして、『量産型機兵』との戦闘を終え、私たちは『量産型機兵』について話し始めるのだった。
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