ブレイバー

「これが、私?」


 それは刹那の一瞬だった。私の姿は制服を着た学童から、電子の世界に住み戦士のような姿に変わった。髪も普段の茶色い髪から紫色の髪に変色し、視界には、ゲームのような情報画面が表示されている。

 どうやら、私はブリュンヒルデとリンクしたことで、別の姿に変身したみたいだ。当然の状況に、私は頭の中を整理する。学校にテロリストが襲撃し、クラスメイト達が人質となり、私は一人サーバールームに入った。

 そして、『仮想世界バーチャルワールド』に入った私は、モンスターのような姿をした『ウィルス』と遭遇。なんとか隠れたが、ブリュンヒルデと一つとなり、今の姿となっている。


『うまく適合が出来たわね。これで、あなたは私と一心同体。『ブレイバー』の真の姿になったと言う事になるわ』

「真の姿? これが、『ブレイバー』の?」


 視界から透明なウィンドウが表示される。『ブレイバー』の情報が、頭に流れていく。脳がインプットされる感触を感じ、何かが頭の中に流れていた。


「まるで、ゲーム見たいね」

『『電脳世界サイバーワールド』を経由した情報をあなたの脳に流したわ。これで、叩き込んだかしら?』

「『M・ブリュンヒルデ』? これが私があなたと一つになった姿ってこと?」

『えぇ。リンクした『ブレイバー』は、脳を100パーセントを引き出すことができる。要は戦うスパコンね。ほら、『ウィルス』の情報が更新されたわ。今の位置からは遠くないようね』


 ブリュンヒルデが、私をガイドする。サーバールームを出ると、モンスターのような姿をした『ウィルス』が、学校の中を徘徊していた。

 私は少し逃げ腰になるが、ブリュンヒルデはアドバイスをする。


『仕方ない。『ウェポン』を展開しましょう』


 ブリュンヒルデは、私の手に武器を展開する。刀としては少し大ぶりな刀を召喚する。


「これは?」

『『正宗』。あなたのブレイドユニットよ。かなりの大ぶりだけど、『ブレイバー』にはそんなの関係ないわ』


 私が武器を見上げていると、『ウィルス』が私に襲いかかる。鋭利な爪が、私を切り裂こうとするが、私はそれを後ろに反転するように避ける。


「体が軽い……。それに、いつもより言うことを聞いてくれる!」

『脳を活性化している影響ね。脳から放たれる電波が、筋肉を促進しているのよ』

「驚いたわ……。それに、この武器を片手に持てるなんて、リミットが外れている感じがするわ」


 驚いている私をよそに、『ウィルス』が再び襲いかかる。すると、私は条件反射的に『ウィルス』を斬る。すると、『ウィルス』が縦に両断されそのままデータ状に消滅していく。


「すごい……! あんなのを一刀両断できるなんて……」

『よそ見している時間はないわ。まだ来るわよ!』


 『ウィルス』の大群が私に押し寄せてくる。私は中型の『ウィルス』を正宗で次々と斬る。すると、再び透明なウィンドウが表示された。


「『ウィルス』の侵食度が減ってきている。これなら、学校のネットワークを解放できるわ!」

『だけど、大元を排除しないと逆に増えていくわよ。大元は1階のテロリスト共が集まっている場所にあるわ。この場所なら、ダイブすればすぐよ』


 私は、ウィンドウの指示に従うため、ウィンドウを操作する。すると、レーダーにマッピングされた場所へダイブする。そして、テロリスト達が集う場所へダイブした。


「なんだ!? こいつ、どこから!?」

「これが、ダイブ? それにここは、もしかして?」

『『現実世界リアルワールド』に帰還したみたいね。でも、リンクを解除するまではこのままよ』


 『現実世界リアルワールド』に帰還したや否や、テロリスト達に囲まれる。すると、またウィンドウに何かの表示がされた。


「これは?」

『『ギリシア・コード』よ。ギリシア文字に例えられ、特殊な能力スキルを発動できるわ』


 ブリュンヒルデは勝手に『ギリシア・コード』を起動する。


「『ギリシア・コード【β】。モード:ガンスリンガー』」


 ヴァルキリーのような姿から、身動きが取りやすい格好に変身する。すると、持ってた武器が大ぶりの刀から二丁の拳銃へと変わる。


「姿が変わった? それに、武器も変わるなんて」

『あなたのこれまで見た映画の記録から、最適解のものを選択したわ。存分に暴れなさい』


 テロリスト達は次々と銃を撃ち始める。しかし、AK-47から放たれる弾丸は、私には遅く見えた。私はそれを避けると、すかさず拳銃を向け射撃する。

 至近距離から放たれる弾丸は、流石の屈強な男達でも対処ができない。そうして、次々と私の銃弾によって倒れていった。


「これは、ガンカタなの? まさか、再現できるなんて」


 ふと我に戻ると、倒れているテロリストを見る。どうやら、殺してしまったみたいだ。だが、血が出ていない。


『死に至るほどの出力にしていないわ。安心なさい』

「それはよかった。それより、『ウィルス』の発信源はあれね」


 私はすぐさまもう一度ダイブする。すると、さっきのとは比べ物にならないほど巨大な『ウィルス』が、私の前に立ちはだかった。


「これが、学校のネットを汚染した『ウィルス』! さっきのとは比べられないほどに大きいわね」

『これを倒せば、この学校は解放されるわ。さぁ存分に行きなさい!』


 私は、ブリュンヒルデに教わったことを存分に発揮する。


「『ギリシア・コード【γ】、モード:パニッシュメント』!」


 格闘家のような姿に変わり、『ウィルス』に向けて攻撃をする。すると、モーターが搭載したグローブで、『ウィルス』の外殻を破壊する。そして、間髪入れずにひたすら『ウィルス』の外殻を破壊する。


「見えた! これが、コアならいける!」


 私はあるだけの力を込め、拳に力を込める。そして、『ウィルス』の外殻を破壊する。『ウィルス』のコアが露出すると、人間の心臓のような鼓動を感じる。しかし、私を止めるために、『ウィルス』は触手で最後の抵抗をする。すぐに私は『ガンスリンガー』に切り替え、二丁のハンドガンで触手を撃ち抜く。そして、触手は銃の跡を残して塵となった。


「『ギリシア・コード【α】。モード:ブレイドダンサー』!」


 姿を戦士のような格好に切り替え、『正宗』を構える。『ウィルス』は手下を召喚するが、私は『正宗』を振るって迎撃する。


「『エネルギー・ブレイド』。中々いいものね。私の動きに合わせて、剣も動いてくれている!」

『なら、これで決めなさい! この一撃で、終わらせましょう!』


 ブリュンヒルデのアシストによって、ウィンドウが表示される。私はすかさずそのウィンドウをアクセスし、『正宗』を下に構える。


「これで決める!」


『ウィルス』の触手を潜り抜け、エネルギーを放出する。そして、苛烈な一閃が、『ウィルス』のコアを横に両断する。


「『α・ブレイズ』!」


 強力な斬撃により、『ウィルス』は再起不能になる。そして、機能できなくなったことで、データ化されて消滅していった。

 ブリュンヒルデは、私を元のヴァルキリーのような姿に戻す。そして、テロリストのサーバーから強制的に退出させられる。『仮想世界バーチャル・ワールド』に戻った私は、疲れから膝を地面につく。予期もしない事態で、相当疲弊していったらしい。


『お疲れ様。初陣にしてはかなりのできね』

「ありがとう。はぁ……。はぁ……。でも、なんだかもう、疲れが来て……」


 倒れる寸前で、私は元の人間の姿に戻った。それと同時に、私は『現実世界リアル・ワールド』に帰還した。突入部隊が学校へ入ってくる。どうやら、教師やクラスメイト達が保護されたみたいだ。

 安堵した私は、そのまま目を瞑り、眠りにつく。こうして、学校を襲ったテロ事件は、密かに幕を閉じたのだった。

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