テロリスト襲撃

 学園生活というのは、閉塞的な環境ともあれば、美しい青春を充実しているものもいる。そんな日常に、テロリストという物騒な存在は必要ない。

 だが今はそれが現実になっている。現にこの学校は、今はテロリストの支配下に置かれているようだ。クラスメイトたちは皆、テロに参加した傭兵に連行されたらしい。スマホの情報も、何かしらのハッキングによって外部と遮断されているみたいだ。


「さて、どうしたものか」


 物陰に隠れながら、私はサーバールームに向かう。しかし、見張りの傭兵が巡回しているせいで、身動きが取れない。銃も身近に持たない日本人では、こうして身を隠して動く方が安全ではある。


『厄介ね。今のあなたは無防備、言うなれば丸裸に近いわね。なら、デバイスにルートを記したわ。その通りに進みなさい』

「ご親切にどうも。さて、4階に上がって遠回りしてサーバールームに行くとしよう」


 なるべく音を立てずに、階段を上がる。4階の踊り場で傭兵の姿を発見する。しかし、私のことを気が付かずに巡回する。安堵した私は4階にたどり着く。

 ここはどうやら、さっきとは違いそれほど警備は薄いらしい。なら、サーバールームへ行けそうだ。


『待って』


 スマホの方から、声が聞こえる。スマホを覗くと、さっきの声の主が何かを知らしてきた。


「どうしたの?」

『まずい事になったわ。奴ら、あなたを探し始めたみたい。警備はより厳重になって来るわ』

「面倒ね。なら、より慎重に行くしかないわね」


 慎重になりながら、サーバールームに向かう。そして、警備を潜り抜け、サーバールームへと到着する。


「ここがサーバールーム……。まさか、学校にこんなところがあったなんて」

『あそこのPCを使いましょう。急いで!』


 サーバールームに置かれているPCのデスクに座る。すると、PCの画面には赤く何かの警告文が表示されていた。


「これはいったい?」

『『ウィルス』よ。どうやら強力なタイプの奴ね。これではここでどんなにやっても、こいつらを除去できないわね』

「除去? 無理ね。私にそんなスキルは無いもの」


 私の諦めを感じた声に、声の主は何かを言う。


『なら、倒せばいいのよ。『現実世界ここ』では所で、あれを蹴散らせばいい』

「何をいって――――」


 私が反論するその刹那、私の意識は白く包まれる。その直後、私の視界は灰色の世界になった。


「ここ、は?」

『あなた達人間が住む『現実世界リアルワールド』と私たちアバターが住む『電脳世界サイバーワールド』。二つの世界が入り乱れ、現実と架空が入り混じるここは『仮想世界バーチャルワールド』と呼ばれてるわ』

「仮想の……世界……? そんなものが、あるなんて」

『本来なら、人間は立ち寄られない場所よ。でも、あなたはここへ来た。何故かわかる? あなたは選べれたのよ』


 彼女の声に、私は驚愕する。選べた? 一体何に?

 ただでさえ、事態が読めない状況の中、私はただ声に導かれるように行動する。ドアを開けると、さっきの見張りがサーバールームに入る。まずいと思った私は、すぐに物陰に隠れる。

 だが、彼らは私を見えていないようだ。まるで、透明人間かのように、誰も私に気づいていない。


「見えてないの?」

『『仮想世界バーチャルワールド』は人間からは見えないわ。でも、それよりも厄介なのが出てくるわ』


 彼女の声に、私は後ろを振り向く。すると、ゲームに出てくるようなモンスターが、廊下を徘徊していた。


「何あれ!? あれが『ウィルス』なの!?」

『これが『ウィルス』よ。ここでは、クリーチャーのようになる。あれは容赦なく発信源を喰らい尽くすわ。あれを倒せられるのは、私たちだけよ』

「いったい何を?」


 私の言葉に彼女は私のスマホから出る。


『改めまして、私は『ブリュンヒルデ』。あなたの『アバター』よ』

「私の、アバター?」

『そして、あなたは選べたのよ。人間とアバターが一つとなって戦う存在、『ブレイバー』として』

「私が、ブレイバー?」


 私のアバターを自称するブリュンヒルデは、私の手を繋ごうとする。すると、『ウィルス』が私を襲い始め、それを避ける為に私は彼女の掴む。


『間一髪だったわね』

「えぇ。だけど、あれでは流石に倒せそうにないわ」

『方法はあるわ。私たちが一つになればいい』

「一つになる? どうやって? 私とあなたは人間とAIよ。無理に決まってるじゃない?」


 私がそういうと、ブリュンヒルデは説明は始める。


『確かに、現実的にはそれはできないわね。でも、私たちはそれができる。『ブレイバー』は人間とAI、それぞれが一つになることで、人智を超えた姿になる。さぁ、デバイスを取りなさい。今こそ、私たちは一つになる時よ』


 彼女の言葉に、私は覚悟を決める。日常が壊れてもいい。彩葉と過ごす日常を守れたらそれでいい。その為だったら、私は彼女と戦う事も厭わない。


「えぇ、力を貸して」

『了解したわ。では、始めましょう。デバイスを顔に近づけて』


 ブリュンヒルデの言葉に、私はスマホを顔に近づける。すると、何かを調べるレーザーが、私の顔を覆う。


『認証完了。人間、『草薙美羽』とアバター、『ブリュンヒルデ』との適合認識を完了。システムオールグリーン。これより、『ブレイバー』へのリンクを開始』


 ブリュンヒルデの認証確認を完了させ、スマホに指を添える。そして、トリガーとなるコードを唱える。


「『ブリュンヒルデ、ライド・トゥ・ブレイバー』!!」


 私の体を無数の数式が包み込む。服は消え、何も纏っていない体に、レオタードが纏まれる。その上に、ドレスような服をさらに纏い、未来的な鎧と翼を展開する。そして、目を開けると、私の変身が完了した。

 こうして、私は変わった自分の姿に驚愕しつつ、戦いに身を投じるのだった。


「これが、私?」

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