第4話【憑き物剥がし。】
同じ頃の追いかけっこ組。
「リクちゃんつーかまーえた!」( ´罒`*)✧"
リク
「あ〜捕まっちゃった〜…袮雪お兄さん足速すぎるよぉ」ケホッ
ちょっと、苦しくなってきちゃったな…。
袮雪
「もう少しかな?」
リク
「え?」
「リクちゃんがんばって!」
「あとすこし!あとすこし!」
「あとすこしー!」
リク
「え?え?なに?どういうこと?」
「がんばれ!がんばれ!」とリクの周りをうろちょろするちびっ子3匹。
リク
「リクはなにをがんばればいいの?」
「いっぱいいっぱい走るのよ!そうしたらリクちゃん疲れるでしょう?」
リクの手を取って笑う女の子。白く長い髪に金色の瞳。一見おっとりした感じだが3匹の中で1番しっかりしているお姉ちゃんだ。彼女は
リク
「リクは疲れればいいの?」
ハテナをいっぱい浮かべたリクの顔をもう1匹の女の子が覗き込む。襟足の長い白い髪と金色の瞳の子。たくさん笑って、たくさん転んだ元気な女の子。彼女は
睡蓮
「そう!リクちゃんが疲れるとね?リクちゃんの中の病気さんが1ヶ所に集まってくるの!」
リク
「び、病気さんて動くの…???」(; ・`д・´)ドキドキ…
今度は睡蓮とは反対側、露草の隣から男の子がひょっこり顔を出した。長く白い髪を頭のてっぺんでお団子にしているアホ毛がほよほよしてるパッと見女の子みたいな金色の瞳の男の子。彼は
白藤
「うんとね、いろんなところにいる病気さんをやっつけるのってとっても大変でしょ?だからね?ひとつのところに集まってもらうの!」
袮雪
「お前たちその説明じゃわからんでしょw リクちゃんの病気はね、リクちゃんの元気を吸って生きてるの」
リク
「リクの元気?」
袮雪
「そう。それでね、リクちゃんがいっぱい遊んで疲れると、病気もね疲れるの。そうすると病気はリクちゃんの元気がいっぱいある所に集まって早く回復しようとするのさ。そうやって集まった病気は抵抗する力も落ちてるし、集まってもらった方が何回も治療しなくて済むからいいんだよ」
リク
「リク、治るの?」
露草
「治るよー!袮雪お兄ちゃんはうそつかないよ!なんでもなおしちゃうんだから!」
睡蓮
「治る!治る!」
白藤
「だからね、えっと、リクちゃん苦しいかもだけど、ボクたちともっともっといっしょに遊ぼう!!///」キャッキャッ
袮雪
「と、言う訳で。あと少し頑張ろう!俺が絶対治してあげるから!ね!」
リク
「…っうん!///」
「よし!行っておいで!」と袮雪に背中を押されてリクはまた3匹と一緒に走り出した。
◈◈◈
【屋敷】
「ん〜?オマエえれぇ
天花に撫で回されて極楽顔でお腹を見せ、喉を鳴らすピケはすっかり天花のあぐらの上で蕩けていた。
天花
「かわえぇヤツだなぁオメェ」
黒いローブ
「……おい」
天花
「ん〜?」
黒いローブ
「ん?じゃねぇ。勝手にここまで連れて来てほっとくなよ。何なんだよお前」
天花
「あ〜?うん。忘れてたわ」
黒いローブ
「ひどいな…」
天花
「んじゃあテキトーに。オレは極東より遣わされた者。こっちには調律の為に来た」
黒いローブ
「…調律。カティリアが言っていた"影法師様"とやらの遣いか」
天花
「そーそー。影法師サマのお使いデス」
黒いローブ
「影法師とは何者だ」
天花
「そいつは言えねぇな。時期じゃねぇ。敵には知れてるんだろうが、だからこそオレ達は慎重に動かなければならねぇ。オレ達が影法師にここに送り込まれてる事ももう知れてるだろう」
黒いローブ
「…調律とは何だ。何をする気だ」
天花
「そうさなぁ。目的1は敵を止める事。目的2は世界に平穏をもたらす事。まぁ、そんなところか」
黒いローブ
「たった3人の遣いだけでそれを成そうとしているのか?無理だな。
天花
「そのほーりーなんちゃらは知らん。オレ達の敵はもっと上に居る。あと3人じゃねぇ。このあとルノマを調律したら影法師が見つけた仲間と合流する。その為の水先案内人がカティリアだ」
黒いローブ
「ずいぶん簡単に言ってくれる」
天花
「オレや銀鈴、袮雪はこの世界にとっての変化点だ。オレ達は本来有り得ない存在だからな。終末までズルズル同じ事繰り返して崩れてくだけのオマエの世界を今すぐぶっ壊すも、好転させる事もオレ達なら出来る」
黒いローブの人物はため息をこぼすとローブを脱いで仮面を取ってほっぽった。仮面を取ったその姿はまだ16、7の少年だった。透き通るアクアマリン色の髪と銀色の瞳。
カティリア
「あれ?誤解は解けたのかい?」
少年
「…今日の晩ご飯なに?」
カティリア
「うん?今日はきみの好きなお魚の煮付けとお野菜の煮物とサラダだよ」
天花
「なんだ?もう出来たのか?///」ワクワク
カティリア
「いえ、下ごしらえと味付けだけしてあとは火妖精にお願いして来ました。もう少しかかります。すみません」
天花
「ちぇ〜。…っと、始まったな」
銀鈴
「其の様で御座いますね。御二人共、部屋の中に移動して頂けますか?ピケも一緒に」
カティリア
「え?えぇ、わかりました。ピケおいで」
訳が分からずにいるカティリアと少年をいつから居たのか露草、睡蓮、白藤の3匹が「早く早く」と部屋に押し込んだ。そして入ったのを確認すると銀鈴が入り口に素早く結界を張った。
少年
「!おいっ、どういうつもりだ!?」
銀鈴
「御二人を守る為の結界に御座います。暫し我慢を」
そして、発作を起こしてぐったりしたリクを抱きかかえた袮雪が戻って来る。
カティリア
「!!リクちゃん!!銀鈴様、ここを開けてくださいっ!!リクちゃん!!!」
銀鈴
「なりません」
リクを床に寝かせ、腰に提げた牡丹の花が描かれた黒い筒の栓を抜く。
袮雪
「
牡丹
「はぁい。あらぁ、可愛いお嬢ちゃんねぇ」
袮雪が呼ぶと筒の口からつむじ風が起こって雪が舞い、全身純白の女が現れた。
リク
「…?おねぇさん、だぁれ…」
牡丹
「アタシは牡丹。今苦しいの治してあげるわ」
リク
「…?」
床に寝かせられたリクを抱きかかえると、その手を握り呪文を唱える。すると下腹部の紋様が白く光った。
リク
「?あ、あれ…くるしくない…なおった???」
牡丹
「これはアナタには苦しかったわね。どう?苦しいのもう平気?」
リク
「うん!お姉さんが治してくれたの?」
牡丹
「治したのとは少し違うのだけれど。これから袮雪がアナタの事をちゃんと治してくれるわ」
袮雪
「じゃあちゃっちゃっと済まそうか。はい!リクちゃん!おっきく息吸って?…吐いてぇ」
リクの頭を撫でながら、その前にしゃがみこんで準備をする。羽織りを脱いだ袮雪の右手に小雪がちらついてまとわりつき、そこを中心に辺りの気温が下がり始める。
袮雪
「ちょーっと、ひんやりくすぐったいけど我慢してね」
リク
「?はい、え?え?∑ぎゃっ!?;;;」
袮雪
「うんw これびっくりするよねw」
リク
「!?!?!?」( °̀ロ°́)
リクのお腹に軽く触れた袮雪の右手。が、服も何もかもを突き抜けて腹の中を探り出した(物理)。痛みは無かった。突っ込まれている手の周りには水のように波が立っている。
袮雪
「あ、居た居た。いくよ牡丹」
牡丹
「はぁい。優しくしてちょうだいね」
袮雪
「それは約束できないなぁw」
リク
「ふふふw あ、あのっw くすぐったいw」
「ほいっ!」という軽い声と同時にパキパキパキという乾いた音がしてリクの目には袮雪の手に掴まれた黒い塊が一瞬映った。
袮雪
「もう一回手を入れるよ。…根っこは残ってないかな……うん。大丈夫そう!終わったよ!リクちゃん!」
牡丹
「アナタ、リクちゃんて言うのね。お疲れ様。もう大丈夫よ」
袮雪
「どう?痛くなかった?」
リク
「なんにも痛くなかったです!くすぐったかったけど」
端っこで大人しく見ていたちびっ子3匹がリクに駆け寄って来てわちゃわちゃと騒いだ。済んだ事を確認した銀鈴は結界を解く。結界が消えるとカティリアが慌ててリクに駆け寄った。
カティリア
「リクちゃん!!大丈夫!?」
リク
「大丈夫です!///」
カティリア
「…よかった」
銀鈴
「其方の少年も此方へどうぞ。ピケもいらっしゃい」
手を差し伸べるとピケは銀鈴の肩へと登った。
カティリア
「えっと、袮雪様でお間違えないでしょうか?」
袮雪
「うん。合ってるけど様は要らないよ。他の呼びやすい呼び方なぁい?さんでもくんでもなんでもいいよ」
カティリア
「えっと、では袮雪さんで」
袮雪
「うん。それよりさ!治療頑張ったリクちゃん褒めてあげてよ」( *´︶`*)
カティリア
「リクちゃんもう苦しくない?大丈夫?」
リク
「大丈夫だよ!今ね、とーっても体が軽くってね!痛かった場所も気持ち悪かった場所ももうどこにも無いの!///」
カティリア
「そっか、よかった…/// 呪いはもう完全に切り離せたんですか?」
袮雪
「バッチリ!根っこも完全に取れてるよ!」
銀鈴
「リクさん」
リク
「うん?」
―にゃあ〜ん。
リク
「!!え、ピケ!?」
ピケは銀鈴の肩から飛び降りて、何度も何度もリクの膝の上を行ったり来たりしてすり寄り甘い声を出した。
銀鈴
「良かったですね」
リク
「ピケ…っ!!」
袮雪
「良かったねぇ。で、これがリクちゃんの中に居た病気、憑き物、呪いだね。カティリアくんこれに見覚えは?」
カティリア
「ボクにはちょっと覚えが無いですね」
袮雪の手の中のそれは氷漬けにされた呪い。人の顔をしたそれは死の恐怖で顔を歪めていた。ぽーんぽーんとお手玉のように投げられるそれを少年は怠そうに眺めている。
少年
「それは
袮雪
「詳しいね、きみ。お姐ぇとお銀ちゃんはどう?もう処分しちゃっていい?」
リク
「それが、リクの中に居た病気さんですか…?」
袮雪が
袮雪
「あはは!睡蓮の口調が移っちゃったねw でもダメだよ?よく分からないモノに手を出しちゃ」
「…この呪いはまだ袮雪さんの氷の中で生きています。迂闊に手を出すとまた呪われてしまいますよ」
放り投げられた氷漬けの呪いは袮雪の背後に現れた男の手の中に落ちた。牡丹によく似た純白の男。ただ、顔の半分は布に覆われ、表情もよくわらかず、話し声の抑揚も無く、リクはこわいと感じた。
カティリア
「あの、袮雪さん…今度はどちら様でしょうか?そちらの女性も…」
「私は吹雪。袮雪さんに仕えるモノです。名乗りもせず失礼しました。以後お見知り置きを」
牡丹
「アタシは牡丹。同じく袮雪に仕えるモノよ。よろしくね」
カティリア
「はぁ、よろしくお願いします。…ところで、それ、生きてるんですか?」
袮雪
「生きてる生きてる」
カティリア
「なんっ!?早く倒してください…!!;;;」
袮雪
「だってよ?もういい?」
天花
「カティリアの話からほーりーなんちゃらのモノだってのはわかってたし、そのガキの情報が本当なら特定も出来たしな。いーんでない?」
銀鈴
「私も其れ以上の情報が有るとは思いません」
袮雪
「んじゃa」
少年
「…おい。俺が嘘言ってるって言いたいのか」
カティリア
「ヨト!落ち着いて!」
天花
「オレはまだオマエを信用していない」
銀鈴
「天花様」
袮雪
「まぁまぁ」
牡丹
「リクちゃん。体はもう大丈夫だから、そこの3匹と遊んでらっしゃいな」
牡丹の言葉にずっと我慢をしていたらしい露草、睡蓮、白藤の3匹はあっという間にリクをさらって浮き島で追いかけっこを始めた。
牡丹
「…元気ねぇ。やっぱり元気が一番よねぇ」クスクス
銀鈴
「申し訳御座いません。牡丹様」
牡丹
「気にしないでちょうだい。そっちの坊やも落ち着いて」
少年
「…」
カティリア
「ヨト。きみ、もしかしてすっごいお腹すいてるでしょう?」
???
ヨト
「…すいてる」
天花
「ぶはっwww」
袮雪
「お腹すいて気が立ってたのwww」
天花
「なんだオメェwww 急に愛いなwww」
ゲラゲラ笑い転げる天花と袮雪に吹雪が痺れを切らす。
吹雪
「結局、これはもういいんですか」
袮雪
「え?あぁ、うん/// あははw ふ、ふふw 思いっきりエグいのよろしく!こんなくだらない事に手を貸すなんてろくな奴じゃないでしょ」
「では」と吹雪をその姿を天花の狐の姿によく似てるがどこか違う、巨大な狐の様な化け物になって氷漬けの呪いを口に放り込み、ゴリゴリと鈍い音を響かせ噛み砕いて呑み込んだ。そしてまた吹雪は男の姿に戻った。
カティリア
「!?たべ…っえぇ!?」(; ・`д・´)
吹雪
「まっず」ペロリ…
袮雪
「美味しい魔物とか居るわけ?」
吹雪
「居るわけないではないですか。
袮雪
「…え?食べた事あるの?」(; ・`д・´)
吹雪
「肌に傷をつけて血を舐めた事があります」
袮雪
「お、おぉ…」
カティリア
「と、ところで、そんなもの食べてお腹は大丈夫なんですか?;;;」ドキドキ…
吹雪
「今のところは問題ありません。
袮雪
「吹雪と牡丹は喰った魔物の力を自分の力に変換する特性があるんだよ。だからたぶん平気。憑き物はいつも食べさせてるの。後処理ラクでいいよ〜」
カティリア
「えぇ、すごいですね」
袮雪
「それじゃあ!まぁ、ふたりともお疲れ!」
牡丹
「はぁい。じゃ!天花ちゃんまたね〜!」バイバーイ
袮雪が持つ2本の筒に帰る吹雪と牡丹。天花はちょっとほっとしている。実は吹雪と牡丹は天花よりも遥かに古いモノなのだ。
袮雪
「相変わらずだねぇ。お姐ぇは」クスクス
天花
「…るせー」( ー̀дー́ )ケッ
袮雪
「チビたちは楽しそうだからあのままにしておきますかぁ。ふふ」
全員の視線の先にはすっかり元気になったリクと仔管の3匹が笑顔満開で遊び回っている。空が黄金色になって夜の帳が降りるまで1人と3匹はいつまでも天高く笑い声を響かせていた。
◈◈◈
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