ドクドク心臓の学園生活
シュラスコランチ
第1話 入学と学園生活初日
入学式当日
春が訪れ、進長学園に多くの新入生がやってきた。入学式当日、体育館は静寂に包まれ、緊張した空気が漂っていた。壇上の先生がマイク越しに軽やかに尋ねた。「みんな、緊張してる?」 すると、どこからか「緊張してません!」と元気な声が響き、会場は一気に和やかな笑いに包まれた。
「学園生活初日」
新たな学園生活が始まり、クラスメイトと早くも打ち解ける生徒が多い中、1年1組はどこか静かだった。話すのが好きな人もいれば、静かな人もいる――主人公の才羽凱人は、自分の席でそんなことを考えていた。手のひらに滲む汗が、慣れない環境の重さを物語っている。「はぁ、ちょっと賑やかすぎるな…」 教室の外から響く笑い声や、机の軋む音が、才羽の耳にやけに大きく響いた。そこへ、クラスメイトの加藤が勢いよく教室に飛び込んできた。初日から全クラスを回り、「おはようございます!」と大声で挨拶するエネルギッシュな男子だ。1年1組に戻っても、一人一人に「おはよう!」と元気よく声をかけ、担任の杵島先生から「いい元気だな!」と好印象を持たれた。才羽にも「おはよう、才羽!」と明るく話しかけたが、才羽は軽く会釈するだけ。もう一度話しかけようとした加藤の背後で、教室のドアがガラッと開いた。「1年1組の担任、杵島です。1年間よろしくね!」 優しそうな声が響き、ニコニコしながら黒板に名前を書く杵島先生。子供っぽい口調で「初日は教科書を買うだけだよぉ〜」と言うと、教室は笑いに包まれた。才羽は一瞬だけ口元を緩めたが、すぐにいつもの無表情に戻った。
「学園生活1週間目」
4月8日、1週間が過ぎ、休み時間に本の話や宿題の相談をするうち、才羽と斎藤――クラスの物静かな女子――は少しずつ打ち解け、ついにLINEを交換した。「…何かあったら、連絡して」と、斎藤が少し照れくさそうに言うと、才羽は小さく頷き、スマホをポケットにしまった。その時、教室の外から他クラスの女子たちの声が響いた。「あ!王子、いたぁー!」とキャーキャー騒ぎながら、窓から誰かを覗き込む。才羽は一瞬、「王子って誰だ…?」と目を細めたが、「まぁ、関係ない」と肩をすくめて本に戻った。しかし、女子の一人が窓から才羽をちらりと見て、なぜか慌てて顔を背けた。その仕草に、才羽は一瞬眉をひそめたが、すぐに気にしないことにした。次の日
休み時間、才羽は教室の喧騒を避け、階段の踊り場で本を開いていた。静かな時間が好きだったが、突然、聞き覚えのある声が近づいてきた。「ねえ、王子、今日もカッコいいね!」 またあの女子たちだ。才羽は居心地が悪くなり、本を閉じて教室に戻ろうとした。だが、教室のドア前にはその女子たちがたむろしていて、戻りたくても戻れない。「…参ったな」と小さく呟きながら近づくと、女子の一人が才羽に気づき、「あ、すみませんでした!」と顔を隠すようにして慌ててどいた。才羽は軽く会釈し、急いで教室に滑り込んだ。女子たちのざわめきは、すぐに頭から消えた。夏が近づく頃
季節が夏に近づくにつれ、加藤の行動に変化が現れ始めた。彼は頻繁に斎藤を電話に誘うようになり、その様子はクラス中からも明らかだった。「なあ、斎藤、今夜ちょっと電話で話さない?」と加藤が軽い調子で言うたび、斎藤は最初、嫌な顔一つせず「うん、いいよ」と答えていた。しかし、次第にその笑顔に微かなため息が混じるようになり、辟易している様子が伺えた。一方、加藤は自分の気持ちに悩み、才羽に相談しようとLINEを送った。「なあ、才羽、ちょっと話聞いてくれよ」と送られてきたメッセージに、才羽は既読をつけたまま返信を保留。頃合いを見計らって、「忙しい」とそっけない一言を返すだけだった。それでも加藤はめげず、休み時間に才羽を捕まえて直接話しかけてきた。「なあ、才羽、ちょっとマジで相談! 斎藤のことなんだけど…」才羽は面倒くさそうにため息をつきながら、「なんで斎藤にそんなに電話とか誘ってるんだ?」と切り出した。すると、加藤は少し顔を赤らめ、「実は…斎藤に好意があって、告白したいんだ」と打ち明けた。才羽は「ふぁ、やっぱりな」と内心で呟きながら、冷静に答えた。「今のままじゃ無理だ。しつこすぎるから、落ち着いて斎藤にいい印象を与える努力をしろよ。」 加藤はニヤニヤしながら「サンキュ、才羽! マジ助かる!」と返すと、才羽は「頑張れ」と短く言って背を向けた。加藤の告白
そんなある日、夏が近づく夕暮れ、才羽のスマホに突然、加藤からLINEが届いた。「あのさ、無理なのは分かってるけど言うね。才羽、好きだ。」 メッセージを見た才羽は、最近の加藤の行動や相談から薄々予想していたのか、驚きは少なかった。それでも、心の中で「また…面倒くさいな」と負の感情がちらつく。LINEなら表情はバレないと考え、才羽は一呼吸置いて「少し考えさせて」と返信。10分後、頭を整理した才羽は「友達でいよう」と送り、その場を穏便に収めた。翌日、斎藤は案の定どこか暗い表情だったが、それは一時的なものだった。数日も経つと、彼女はいつもの穏やかな笑顔を取り戻し、才羽は「まぁ、諦めがついたか」と心の中で呟きながら、いつも通り接した。斎藤は加藤との電話のやりとりが減り、「楽と言っちゃ悪いけど…」と口には出さないが、肩の荷が下りたように軽やかな様子だった。
「王子」の謎に迫る
才羽に振られた加藤は、気を取り直すように他クラスの女子たちと話すようになっていた。なんの因果か、その女子たちは当初、才羽の教室の前で「きゃー、王子いたー!」と騒いでいた三人組だった。才羽はそんな加藤の動きを横目で見つつ、「王子」の正体が気になり始めていた。これまで「関係ない」と無視してきたが、女子たちの妙な反応――特に、才羽を見て慌てて顔を背ける仕草――が頭から離れない。意を決した才羽は、独自に「王子」を調べることにした。まずは、女子たちが教室の前に来た時の目線や、立っている場所からどの机が見えるかを徹底的に観察した。廊下の角度、窓の位置、教室のレイアウト――ノートに細かくスケッチしながら分析したが、手がかりはほとんど掴めなかった。「ちっ、時間の無駄か…」と苛立ちながら、才羽はいつもの螺旋階段の踊り場に腰を下ろし、本を開いて状況を整理しようとした。すると、まるで神の悪戯のように、聞き覚えのある声が近づいてきた。「あれ、どっか行っちゃった? あの男の人…」 あの女子三人組だ。才羽は咄嗟に階段を数段上がり、物陰に隠れるようにして本を手に持ったまま耳を澄ました。女子たちの会話が、風に乗り響いてくる。「ねえ、あの1組の才羽って人、カッコいいよね!」 一人が言うと、別の女子が「そうそう、王子でしょ!」と笑いながら返す。才羽の心臓が「ドクドク」と早く鼓動した。「…は? 俺が王子?」 一瞬、頭が真っ白になり、本を持つ手が震えた。いつもなら「関係ない」と切り捨てるのに、なぜかその言葉が頭にこびりつく。女子たちが去った後、才羽は階段に座り込み、「めんどくせえ…でも、なんだこれ」と呟いた。自分の存在が周囲にどう映っているのか、初めて気になり始めた。
ドクドク心臓の学園生活 シュラスコランチ @japanet
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