第2話 僕が精神疾患者になったのは理由がある。

東京の夜間大学に通っていたころ、僕は、独学で、心の問題に取り組んだ。精神分析学です。自分で、自分の心を分析して、人間には、まず、4つのタイプの領域があると突き止めた。創造性、存在性、経済性。政治性。さらに詳しく踏み込む。内在と外在。自分の中と外である。音楽と文学を通じて独学でやったのである。暗く狭い、東京のボロアパートで、僕は、今思えばかなり危険なことをしていた。実際に危険だった。人の道を、踏み外すことになったのだから。


ここまで分析したら、僕は、ひとりの精神分析学者にぶち当たった。スイスのカール・ユング。1875年生まれ1961年死去。ユング心理学。自然と、僕の師匠になった。僕は、従事することにする。しかし、資料が少なすぎたのがあだになったのと一人で挑戦して、孤独の世界にさまようハメになったのが、危険すぎた。ユングの書物を、読み込む必要があったが、当時の僕は、自分で、働いて、買った大量のレコードコレクションと大量の本で、独学でやる。自然と、宇宙に目が向いた。併せて、僕は宇宙も考えるようになった。


僕の住む東京の街は石川台。大田区にあった。隣に洗足池があって、よくひとりで散歩した。考える散歩である。洗足池図書館があった。毎日通う。夜になると夜間大学に通う。昼間は、ボロアパートで、研究に取り組んだ。猫が気になった。墓場も気になった。カラスも気になった。東京の街中で孤独にやるには、あまりにも危険だった。次第に、精神に異常をきたす。女が、気になった。変態的になる自分がいた。セックス、ハーレム、乱交パーティ、酒、煙草が気になった。次第に夜が眠れなくなった。東京の街中を、深夜俳諧に繰り出すようになった。


奇妙な出来事が起こり始めた。街中の野良猫どもが、僕を嫌悪する。街中の子供を連れたお母さんが、僕を見ると、さっと逃げる。僕は、次第に孤独の世界にさまようことになる。耳から声が聞こえるようになった。しかし、大人になれば、みんなそうなるのかと、タカをくくっていた。温かいホームが気になった。星が気になる。


精神疾患。当時の僕は、そんな病気があることは想像もつかなかった。心の病である。精神分析学は、結果的に、踏み外し、バランスを崩していく。僕は、なぜか、とても自殺が怖くなった。


結果として、僕は精神病院に入ることになった。

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