バイト先の後②

どれくらい飲んだろう…そして今、3?4?軒目?


「お~い、ビジン~かえるぞ~」


あっちゃんも大分酔ってるらしい。


「ビジン家に行っても良い?」


「ダメだ…」


「え~なんで~?」


あっちゃんが腕に抱きついてくる。

まずい…理性が…


僕は自分の頬をつねった。


「いや、今日はダメ!」


俺はきっぱり断った!

そのまま同じ電車に乗り、同じ駅で降り、同じアパートに…


「おじゃましま~す!」


あっちゃんはいつの間にか家に来ていた。

押しに弱いところは本当に直さないと…


あっちゃんは途中、コンビニで買った缶を机の上に置き、座った。


「さーて、飲んで…なにする?♡」


「おい」


「うそうそ…ほんとに飲み足りなかったの!」


あっちゃんには困らされてばかりだ…

だが、正直それが心地良い。


「あっちゃんはホントに人当たりが良いよな?」


「あー…うん…ありがとう!」


なんか反応がおかしい。


「あっちゃん?」


「いやーあの、私、仕事辞めたって言ってたじゃん?あれ、社内でイジメみたいなのされちゃってさ!だから全然人当たり良くないよ?」


初耳だ。

許せない。


「ほら、私こういう性格じゃん?だから誰とでも仲良くなれちゃうんだけど、お局さん?のお気に入りの男の子にもフランクに接してたら、女性陣から無視される様になっちゃってさ…」


あっちゃんは話し終わると、悲しそうに笑った。


なんて声を掛けたらいいだろう…

とにかく許せない…

辛かっただろうな…

まずは…


「話してくれてありがとう」


あっちゃんはこちらをじっと見つめ、視線をおろしてから、こう言った。


「そういうところだよ」


「ん?」


「今も、すごい沢山考えて、言葉を選んでくれたでしょ?そういうところが…好きなの」


僕は聞くことしか出来ない。


「だから、今日ちょっと意地悪なこといっちゃったけど、ホントに気にしないでね。優しいビジンが女3人もたぶらかすなんて出来ないの分かってるから!」


「あっちゃん…」


「でも、2番目でも3番目でも良いってのはホントだから!」


「またそういうことを…」


あっちゃんはカラカラ笑っている。


分かってる。

場を和ませようと、冗談を言ってくれたのだ。


あっちゃんは誰よりも気遣いの出来る人だと、僕は知っている。

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