遊園地②
僕は動けなかった。
フードコートの喧騒が何も聞こえなくなった。
あっちゃんは僕から顔を遠ざけると、いつもみたいにカラカラ笑った。
「びっくりした?」
「う、うん…」
僕は素直に答えるしかなかった。
「そういうことだから!」
どういうことだと言うのだろう。
あっちゃんと僕の呼び出しブザーが鳴る。
「ほのちゃん達が戻ってきたら、取りにいこっか!」
「う、うん…」
僕は頭の中が良く分からないことになっていた。
ちょっと楽しみにしていた回鍋肉定食は何の味もしなかった。
僕たちは食事を終えると、またアトラクションを楽しんだ。
3人とも話しづらくなってしまったことで、あっちゃんに『逃げる』僕はいなくなった。
故に、逆にいつも通りに戻るという良く分からない現象が起こっていた。
4人で何でも会話をした。
4人で笑った。
僕は上手く笑えていただろうか。
僕の様子のおかしいことに誰か気付いていただろうか。
これまで、仮面を被って人と接することが多かった僕の様子がおかしいことに。
気付いたら、日は暮れていた。
そして、家に着いたのは、23時過ぎだった。
とにかく疲れた。
今日は考えるのを止めて、とにかく寝ようと思ったが、考えるのを止めることは出来なかった。
僕は3人から好意を寄せられている、と思う。
ほのちゃんからは先輩として。
菜奈さんからは「男として」。
あっちゃんも「そういうことだから」と言ってた。
鈍感なフリをしていて良い年齢ではない。
それは分かっている。
でも僕はどうすれば良いか分からないのだ。
一つ、確かなことがある。
バンドがしたい。
あの3人と。
だからこそ、僕は、いや、俺は答えを出すことにした。
もう一つの、確かなことを、3人の前で高らかに宣言することにした。
決戦の場は、次のスタジオ練習だ。
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