結成⑤

翌朝、僕は家のベッドで目を覚ました。


記憶がない。


初のスタジオ練習が終わった後、4人で居酒屋に行った。

歌詞を書き直す宣言をした所まで覚えている。


その後…?


「痛っ」


頭痛だ。

確実に飲みすぎた。


水を飲みにベッドを出ようとすると、隣に誰かいるのに気付いた。


え?


そういえばめちゃくちゃ良い匂いがする。

女性だ。


どうしよう…

別に彼女もいないから、ダメなことはないのだが、覚えていないのが怖い。


女性は向こうを向いている。

金髪だ…まさか…

確認すべきかと迷っていると彼女は起き上った。


「んー…あれ?起きた?」


あっちゃんだ。


「あっちゃん…!!!いや、あの、その、あの…」


僕が慌てふためいていると、


「ん~?何かあったんじゃないかって焦ってる?別に何もしてないよ~?人をケダモノみたいに失礼な!」


あっちゃんはクスクスと笑った。


僕はほっとした。

そして尋ねた。


「あの後って…」


「居酒屋の後でしょ?菜奈さんは仕事だからって帰ったよ!今日は月曜だしね。ほのちゃんも朝からバイト入れちゃってたんだって!それで潰れちゃったビジンを私が家まで連れて帰ることになって、家着いた頃には終電なくなってて…って感じかな!」


「そっかそっか…それは迷惑かけたね…本当にごめん」


「いやいや全然だよ!」


少しずつ冷静さを取り戻してきた僕は、ふと疑問に思った。


「あっちゃんは仕事大丈夫なの?」


「ん?実は私も仕事辞めたんだよね!なんか嫌になっちゃってさ!」


あっちゃんはいつも通りカラカラと笑っているが、僕には笑顔が少し引き攣っている様に見えた。


詮索はするまい。

僕は言った。


「そっか!同じだね!」


僕はあっちゃんの真似をして、カラカラと笑ってみた。


「ところで、何でベッドで寝てたの?」


「いや、他の場所が汚すぎて…」


「ごめん…」


僕は、歌詞作りにかまけてサボっていた、掃除を再開することを心に決めた。

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