結成④

初のスタジオ練習後、僕たちバンドメンバーは4人でスタジオ近くの居酒屋へと来ていた。


周囲の視線が痛い。

それもそうだ。


タイプの違う美女が3人もいるだけじゃなく、冴えない男(無職)がおまけに付いているのだから。


ほのちゃんはやはりサブカル系の魅力がある女性だ。

下北や原宿が似合いそうだ。


あっちゃんは個性的な魅力を放っている。

金髪に派手なファッションは独特のオーラを醸し出している。


菜奈さんは紛れもない『美人』だ。

黒髪をなびかせる彼女は、まるで一流モデルの様だ、


僕の肩は心なしか縮こまっていた。

周囲をちらちらと気にしていると、あっちゃんが唐突に放り込んできた。


「いやー…それにしてもビジンの歌詞は無難だったねー!それもらしいっちゃらしいけど!」


あっちゃんはカラカラ笑う。

不思議と嫌な気はしないが、他の人だったらかなりアウトな発言だと思う。


「でも、初めて書いたんでしょ?それにしては上出来だと思うよ?」


すかさず菜奈さんがフォローをしてくれた。

流石だ。


相変わらず、僕はほのちゃんの方を見れない。

すると察したのか、ほのちゃんが口を開く。


「いやでも…」


「あの!」


僕はカットインした。

何故かほのちゃんにフォローをさせたくなかった。


「俺、書き直します!もっと良い歌詞書いてきます!」


自分の予想より大きい声が出てしまった、ということはなく、適切な音量で店内に響いた。


「分かりました…宜しくお願いします…!」


今日初めてほのちゃんの顔をまっすぐ見れた。

ほのちゃんは笑っていた。


「タイトルもお願いね」


菜奈さんが微笑みながら言った。


「あ、そうですよね…了解しました。」


僕はすっかり忘れていた曲名という追加の宿題を課せられ、その日は飲んだくれた。

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