三十一夜 既視感しかニャイト
バド爺の
カツンカツン!
ボロ家のドラゴンのドアノッカーを鳴らずと「だれにゃ?」とぶっきらぼうに言い放つ助手の声が聴こえる。
「俺にゃ」
「帰れにゃ」
「帰ってもいいのかにゃ?」
「はあ? オレオレ詐欺とかウザいので帰ってくださいにゃ」
既視感しかにゃいが、俺は続けた。
「⋯⋯じゃあ、ジジイに今回の契約は無かった事にすると伝えろにゃ。ブツは土下座してもやらにゃーにゃ」
ガチャリ⋯⋯。
ヌボーっとした明らか徹夜した顔で、ドアの陰からこちらを覗くマリー。
「げっ⋯⋯」
「何が『げっ』にゃ。伝言は伝えたにゃよ」
「ま! ままままま待たれよ!!」
「偉そうにゃね?」
「す、すすすすすすすすす」
「す?」
ガバッ! おお、これはみごとな土下座。少し前にに見たばかりの、二番煎じ的な土下座を見せられた。
「すみませんでしにゃああああああ!!」
「じゃ、帰るにゃ」
「ん待つにゃああああ!! にゃ、待ってくださいにゃっ!!」
何回このやりとりをするんにゃ? グイッと服の裾を掴まれる。
「さっき帰れと言ったにゃ? 帰れと言ったり待てと言ったり何様にゃ?」にやり。
「く、靴! 靴の裏を舐めますにゃ!!」
「ほほう。裏と来たか。ちょうど馬がいるにゃが、馬の蹄の裏でもいいにゃ?」
チラリと俺の背後にいるオルガが手綱を持にぎっていて、その隣に馬がいるにゃ。
「ひいっ!?」
「冗談にゃ」
「ひどい!?」
ようやく、来たにゃね。
「これこれ、ボクの可愛い弟子をいじめにゃいでくれるかにゃ」
「師匠!! 助けてほしいにゃ!」
「ジジイ、これはいったいどーゆー了見にゃ?」
「まあまあ、立ち話もにゃんじゃろ? 奥で茶菓子でも食べにゃがら話すにゃ」
何から何まで既視感しかにゃい。デジャビュか?
「⋯⋯茶菓子よりも飯がいいにゃ」
「ふふ、よかろう」
「カリカリにゃら要らにゃーにゃ」
「なぜカリカリにゃとわかった?」
「以前にも同じことがあったにゃが、しけってたにゃ」
ジジイが馬車に目をやる。目敏いにゃね。
「マリー、今日の作業は一旦中止にゃ。何か美味いもんを買って来てくれにゃ。ノックス、馳走を振る舞うにゃよ。入れにゃ⋯⋯ん? そいつは?」
「オルガにゃ。これから炭鉱の管理を任せるにゃ。必要にゃ分のミャスリル銀はこれからオルガに注文するといいにゃ」
「ふむ。よかろう。まあ中に入れにゃ」
バド爺の工房はこの汚らしい小さな家屋の地下にある。言うなればこのボロ家はフェイクにゃ。
ギイ⋯⋯。地下通路へ続く階段が現れた。ゴォォォ⋯⋯中へ空気が流れ込む。俺たちはそれに吸い寄せられるように地下へと降りたにゃ。
「凄い⋯⋯こんにゃ
オルガが感嘆の声をあげた。
「にゃ。ジジイのラボはほぼ
「⋯⋯にゃんてスケールの
「知らにゃーにゃ。そんにゃことよりジジイ、どこに行くにゃ?」
「ん? アレを持って来てくれたのじゃろ?」
「ああ、カトブレパスの瞳のことにゃか?」
「左様。お前が持って来てくれることを想定してちょうどこれを仕上げておったところじゃ」
ジジイが白い布を取り払うと、そこには寝台に寝そべった牝猫?がいた。
「ジジイ、ひでぇ趣味にゃ。堕ちるところまで堕ちたにゃか?」
「何を言っておるにゃ。よく見ろにゃ」
「⋯⋯こいつぁ、
「まあそんなところにゃ。言ってみればゴーレムに近いにゃ。命令に忠実に動くにゃよ。これでうちの猫手不足を補えるにゃ」
「ノックス、この爺さん何者にゃ? 鍛冶師じゃにゃいんにゃ?」
「ただのエロジジイにゃ」
「猫聞きがわるいにゃ。せめて博士と言ってほしいにゃ」
「牝猫の体をこんなに緻密に再現するヤツは変態にゃ。騙されてはいけににゃーにゃよ? ん、クリス? 何顔赤くしてんにゃ? はは〜ん、おめぇも年頃ににゃったにゃね!?」
「ちっ、違いますにゃ!! ぼ、ぼぼぼ、ボクはそんにゃ⋯⋯エッチじゃにゃ〜です」
「なあ、爺さん」
「にゃんじゃノックス、改まって? 気持ち悪いのぉ」
「うっせ! このクリスが一人前ににゃったら、爪を作ってやってくれにゃーか?」
「ほう。お前が頼みごととは珍しいのう? そんなに見込みがあるのかにゃ?」
俺はクリスの頭に手を置き。
「こいつみたいなヤツが、ニャイトににゃるべきにゃ」
くすぐったそうに目を細めるクリス。
「そうか。お前がそこまで言うにゃら、そうにゃのだろうさ。坊主、精進しろよにゃ」
「にゃ!」
喜ぶクリス。
いつかニャイトに、にゃれるといいにゃね。
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