三十二夜 帰らニャイト

「見事じゃにゃ。確かに依頼の品、確認したにゃ。謝礼金は上積みしてあとでマリーに用意させよう。して、ノックス」

「にゃんにゃ、ジジイ?」

「ドラゴンは討伐したのかにゃ?」


 ⋯⋯やっぱり。


「ジジイてめぇ、知ってやがったにゃ!?」

「そんにゃことはどうでも良いじゃろう。それよりもどうにゃんじゃ? 討伐したのか? してにゃいのか?」

「こちとら腕を無くしかけたんにゃ。どうでも良いとはにゃんにゃ!?」

「はん、にゃくにゃったらにゃくにゃったで作ってやるではにゃいか」

「しれっとそんにゃわけのわからんことを言う⋯⋯ドラゴンはまだ洞窟の中にゃ」

「にゃんじゃと? ではドラゴン素材は手に入らんと言うことにゃか⋯⋯これは誤算にゃね」

「てめっ、そこまで計算していたにゃか!? ひでぇジジイにゃ!」

「にゃんせ、チュールを渡すんにゃ。それくらいは期待しても良かろう?」

「バカ言え! カトブレパスの依頼も受けたにゃろうが!?」

「どうせ大した手間ではにゃかったはずにゃ」

「では三匹分は返してもらうにゃ」


 グッ↔グッ


「これはもう買い取ったものにゃ。返す必要はにゃいにゃ」

「ちっ、いいにゃ。これで依頼は全て完了にゃ。馳走ににゃった、失礼するにゃ!」

「ノックス」

「まだにゃんか用かにゃ!?」

「チュールでは⋯⋯、いや、あまり無理すんにゃ?」

「⋯⋯ふん、どの口が言ってるにゃ」


 まとまった金とチュールが手に入った。


 このまま、オルガのアジトの仔猫キティたちを拾って、メルルーサの孤児院に向かう道すがら、ジオジオのパンを買い占め、港町牧場のフレンチトーフトを土産に修道院の孤児院に向かうにゃ。


 その前に。


「すまん、少し寄って欲しいところがある」

「わかったにゃ。どちらまで?」

「ウルメの町外れにある一軒家へ向かってほしいにゃ」

「⋯⋯にゃ」


 ウルメの町は大きくはない。程なくして目的地に着いた。


 ⋯⋯久しぶりにゃね。


「こんにゃところに家があるにゃんて!?」


 ウルメの町外れにひっそりとたたずむ小さな邸宅。俺の実家にゃ。実家といっても既に両親はいにゃい。いるのは、兄貴と


「アーリャさん、ご無沙汰しております」


 兄貴の婚約者のアーリャさん。


「あらノックスさん、おかえりなさい。今日は珍しくお友だちを連れていらしたのね? どうぞゆっくりしていってくださいね」

「ああ、オルガとクリスにゃ。すぐにゆくにゃが、兄貴に用があるにゃ」

「「お邪魔します」」

「⋯⋯そう。きっとイヴァンも喜ぶわ♪」


 俺たちはアーリャさんの後をついて家に入った。


「イヴァン、ノックスさんが帰って来たわよ♪」


 ⋯⋯だよにゃ。


「兄さん、ただいま」


 部屋の窓際で椅子に腰掛けてうにゃだれている。ボタボタとよだれを垂らしては、うーうーとうめき声をあげ、焦点の定まらにゃい虚ろな目でチラリ俺を見た。


「うあっ、あ、ううぅ⋯⋯ああああっ!!」


 義姉ねえさんが兄貴の背中をさすって興奮を抑える。いつものことにゃ。


「オルガ、クリス、これが俺の兄イヴァン、ドカン王国のニャイトにゃ」

「「イヴァン・グロズニュイ!!」」

「ああ、それはニャイト名にゃ。本名はイヴァン・ノヴァ・ルミナス」

「これが⋯⋯ニャイト!? あっ、すみません!」

「いや、いいんにゃ」


 そう。


「これがニャイトの成れの果てにゃ」


 ⋯⋯義姉さんが悲しい顔をする。その顔を晴らしに来たんにゃが、どうにゃか。


「アーリャさん、これを兄貴にやってくれにゃーか?」

「⋯⋯これは?」

「チュールにゃ」

「「「──っ!?」」」


 にゃ、一様に驚いた顔をしている。そりゃそうにゃね。普通には流通することのにゃい、超万能薬。死んだばかりにゃら蘇生すら出来ると言う伝説の薬にゃ。治せない病気はにゃいと言うが⋯⋯果たして?


「そんにゃ希少にゃものを、本当にいいのかしら?」

「本当にゃらばドラ王が用意するべきものにゃ。夜のため国のために身を尽くして戦って来た兄貴を、使い物ににゃらにゃくにゃるとゴミでも捨てるかのように見捨てたにゃ⋯⋯」

「「にゃっ!?」」

「ノックスさん、それはもういいんですにゃ。この人が望んでニャイトににゃったんですもの。きっと悔いにゃんてにゃいわ⋯⋯きっと」

「そんにゃ⋯⋯そんにゃわけあるわけにゃいにゃろ!! あんたと結婚するって張り切ってた兄貴が!! これから結婚と言う目前ににゃってこんな、こんなことってあるかよ!! なあっ!?」


 うっ!! ⋯⋯くそっ。


「すまんにゃ。言い過ぎたにゃ⋯⋯」

「いえ、いいんです⋯⋯ありがとう、ノックスさん」


 俺にゃんかより、義姉さんの方がずっと辛いに決まってるにゃに⋯⋯。

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