地球の2時間が異世界で20年!?清楚な少女が妖艶な美女に!?ちなみに、もう俺を地球へ帰さないそうです。
茶電子素
第1話
気がついたら、俺はまたあの光の中にいた。
ついさっきまで、地球の自室でカップラーメンをすすっていたはずだ。
そういえば神様が「ちょっと手違いで戻しちゃった、すまんね」
とか言っていたな。いや、軽すぎるだろ。
光が収まると、そこは見覚えのある異世界の大聖堂だった。
だが、空気が違う。
壁の装飾も、床の石畳も、少しくたびれた?
俺が最後にここに立っていたのは――ほんの二時間前の感覚なのに。
「……お帰りなさいませ、勇者様」
声がした。振り返った瞬間、俺は息を呑んだ。
そこに立っていたのは、かつて俺を召喚した少女――いや少女だった女性?
さっきまでは俺より年下で、清楚で、儚げで、
守ってあげたくなるような存在だった。
だが今、目の前にいるのは――
「二十年……ずっと待っておりました」
彼女は微笑んだ。
大人の女の余裕をまとった笑み。
腰まで伸びた髪は艶やかに揺れ、
豊満な胸元は神殿の衣を押し上げている。
近づいてきた瞬間、甘い香りが鼻をくすぐった。
「え、二十年……?」
「はい。勇者様が元の世界に戻られてから、こちらでは二十年が経過しました」
頭が真っ白になった。
俺にとっては二時間。彼女にとっては二十年。
その間、彼女は――俺を待ち続けていたのか。
「あなたがいない間、私は聖女として国を守り続けました。でも……夜になると、どうしても思い出してしまうのです。あの日、あなたが私の頭を撫でてくれたことを」
彼女は一歩、また一歩と近づいてくる。
距離が近い。近すぎる。吐息が頬にかかる。
「ちょ、ちょっと待って!俺はまだ高校二年……十七歳だぞ!」
「存じております。ですが、私にとっては二十年分の想いがあるのです」
抱きしめられた。
柔らかい感触と、逃げられないほどの力強さ。
清楚だった彼女はもういない。
目の奥に宿るのは、狂おしいほどの執着?
「あなたがいない間、求婚してきた王侯貴族も、騎士も、全部断りました。だって……あなたが戻ってくると信じていたから」
笑顔なのに、背筋が凍る。
「さあ、勇者様。もう離しません。二度と」
彼女の腕が俺の首に回される。
甘い香りに包まれ、視界が揺れる。
逃げなきゃ、と思うのに、心臓は妙に高鳴っていた。
「……俺、地球に帰れるのかな」
「帰れません。神様に頼んでおきました。二度とあなたが消えないように……」
耳元で囁かれた瞬間、俺は悟った。
――ああ、これはもう詰んでる。
けれど、不思議と絶望感はなかった。
二十年も待たせてしまった彼女の想いが、重くて、怖くて、でもどこか甘美で。
「勇者様。これからは、ずっと一緒です」
彼女の瞳に映る俺は、逃げ場を失った獲物のようだ。
――それでも、ほんの少しだけ悪くないと思ってしまった。
こうして俺は、二度と地球に戻れない未来を確信したのだった。
地球の2時間が異世界で20年!?清楚な少女が妖艶な美女に!?ちなみに、もう俺を地球へ帰さないそうです。 茶電子素 @unitarte
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