第6話 寝るのも仕事らしい

6-1

「俺はちょっと出てくるが、新人くんは絶対にこの部屋から出るなよ」

 クラッシュがそう言い残し部屋を出ていったので、新人は大人しくちびちびとコーヒーを飲んでいた。最初は慌ただしく働くNSB職員たちに何か手伝うことはないかと声を掛けたが、丁重に断られてしまったのだ。

 自分が手伝おうとすればいちいち指南が必要なので当然だったが、役立たずぶりを自覚し落ち込む。

「我々は現場ではお役に立てませんから。命を張って任務に臨んでくださるんですから、今は少しでも体を休めて。情報収集はお任せください」

 そう話した彼らが自分の仕事に誇りを持っていることを感じた。皆が自分にできることを精一杯やっている。国民に何も知らせないまま、平和を守るために。

 ただでさえ役立たずなのに、気持ちまで落ち込んでどうする。

「ふん!」

 新人は気合を入れて、バチン! と自分の両頬を叩いた。

 クラッシュは三十分ほどでガサガサとビニール袋の音をさせて部屋に戻った。

「どうしたんだ、その顔」

「……何も」

「ふぅん?」

 彼に指摘され、新人は紅潮した頬を両手で押さえる。

「そら、ご要望の品々を買ってきたぜー!」

 クラッシュは職員たちの元へビニール袋を持っていった。彼らに何がほしいか事前に聞いていたのだ。

「エナジードリンクをくれ」

「ほい」

 レディが破壊していったらしきパソコンの復旧を試みているハックにクラッシュが大きな缶を渡す。ハックはすぐさまプルタブを引きそれを呷った。

「どうだ? 直りそうか?」

「念入りに破壊されてた訳じゃないからな。スクリーンとCPUが分かれただけだから、たぶんなんとかなる」

「すごいな。頼むぜ」

 クラッシュは他にもテーブルに大量の食料を広げ、新人のところにもパスタを温めて持ってきた。

「すみません、ありがとうございます」

「いいんだ。いつ『チーム』が狙ってくるか分からないから、新人くんが行くとどうせ俺も付いていかなきゃいけないからな。知らない人間を入れたくないからデリバリーを頼む訳にもいかないし」

「私、足手まといですね」

「おいおい、どうした。UXも他の職員も、誰もそんなこと言ってないだろう? みんな個性的だからな、適材適所があるだけだ。期待してるんだから元気でいてくれないと困る。腹が空いてるからそんな弱気になるんだ、さっさとあったかい物を腹に入れろ」

 クラッシュはバリバリとラップを剥き、蓋を開けてフォークまで添えて新人の方へとパスタを押しやった。

「そんなのでよかったか?」

 新人は頷く。クラッシュは彼女にもリクエストを聞いたが、彼女が他の職員と同じ物でいいと言ったのだ。

「トマトソースは好きです」

「そりゃあよかった」

 クラッシュ自身はハンバーガーに手を付ける。

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