3-2
「ええっとー……私は何をすればいいですか?」
ハンバーガーを食べ終えた新人は、困り顔でクラッシュを見上げた。
「ん? そうだなあ、何もないが……」
新人が途端に意気消沈したのを見て、クラッシュは笑って眉を上げる。
「仕事熱心なのは良いな。まあ、まずは全員に挨拶するところからじゃないか? 一緒に仕事するんだから関係作りは大事だろう」
「そうですね、挨拶」
大仕事を前にレディが熱心にコンピュータを触っている横でそんなことをしていていいのかは気になったが、新人は素直に部屋にいた他の人間に挨拶をしにいく。クラッシュもだらだらと付いていった。
「おはようございます! 新人です! まだ名前はないです」
「おはよう。よろしく」
ずっとライフル銃の手入れをしていた初老の男が手を止め、髭の下で僅かに口角を上げる。
「えっと、なんとお呼びしたら」
「スナイプだ。超凄腕のスナイパーだが、無口なんだ」
後ろからクラッシュが勝手に紹介した。スナイプもそれなら自分が話す必要はないとばかりに銃の手入れに戻ってしまう。
「よろしくお願いします、スナイプ」
スナイプは頷いた。新人も一つ頷いて、隣りの席でパソコンを叩いている若い眼鏡の男に声を掛ける。
「おはようございます。新人です。今日からお世話に」
「俺はハックって呼ばれてる。よろしく。ところで君はパソコンは何を使ってるのかな。スマートフォンは? タブレットは。俺が作ったこのウイルスをちょっと試したいんだけど……」
「えっ、あの」
「ハック。彼女にウイルスは無しだ。さっきの話は聞いてたか? ジョンソンかアディールにやってくれ。レキシントンビルに入るには絶対にお前の力がいる」
猛然と話しはじめた若い男の両肩を、クラッシュが後ろから叩く。
「ん? なに。そうか、レキシントンビル……こいつは手強いぞ……」
男は何やら呟くとキーボードを叩き、ゲームでもするかのように楽しそうにビルのシステムを攻略しはじめたらしい。クラッシュは軽くため息を吐く。
「悪いな。ハックは」
「ハッカーなんですね……」
新人は呆気に取られて、彼の後ろから何が書いてあるのか分からないパソコンの画面を眺めた。
「こいつも物凄く腕は良いんだが、オタク気質でね。早口だし、自分の興味のあることしか話さない」
「そうみたいですね」
新人はこの職場に馴染めるか不安になる。
「えっ、これで全員ですか?」
部屋にいる人物全てに挨拶を終えてしまい、新人はクラッシュを振り返った。
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