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「そうだな、よく顔を合わせるのはここにいるのとあと他に数人ってところだ。テロ組織に数年がかりで潜入中の奴もNSBにはいるらしいが、レディのチームではないから詳しくは俺も知らない」
「チームが分かれてるとあまり関わりがないんですね」
「そういうことだな。君はレディがスカウトした時点でうちに所属することは決まってるから、これからよろしく頼むぜ」
「こちらこそよろしくお願いします」
コーヒーでも淹れるか、ついでにもう少し職場を案内しよう、とクラッシュが部屋を出るのに付いていく。本棚を押し開け、またUXの傍を通り廊下へ。新人は緊張しながらUXの部屋にいる面々に会釈をしたが、みんな忙しくしていて誰も返してはくれなかった。
「クラッシュはいつもは何をしているんですか」
「まるで俺が物凄く暇人みたいな聞き方をしてくれるな。人手不足って言っただろう。忙しくしてるんだぜ。ターゲットにカメラを付けるだけの昨日の仕事は楽な方だな。俺自身が何日もターゲットを尾行しなきゃいけないときもあるし、成り行きで銃撃戦やカーチェイスをするときもある」
そんな成り行きがあってたまるか、と新人は眉間に皺を寄せる。人生で一番の大事件だった昨日の出来事を「楽な方」と言いきられ気が重くなった。
「今日みたいな、任務がない時間は?」
「休んでるな」
新人は「えぇ……」と呆れたような声を漏らす。
「今、『サボり?』って呟いただろう。聞こえてるぞ。あのな、真面目なのはすごく良いことだが、休めるときに休むのも大事なんだぜ。俺たちみたいな仕事は休みの日だっていつ呼び出されるか分からないんだからな」
俺はいつでも活躍できるように備えてるんだ、とクラッシュは胸を張った。
「呼び出しとかあるんですか」
新人は驚いて聞き返す。
「しょっちゅうだな」
クラッシュはなんてことないように頷いた。
「まあ、『休んでる』なんて答えはつまらないから、他にやることも教えておこう。一つは、このジムで体を鍛えることだな」
クラッシュが入館証を機械にかざしてドアを開けると、スポーツジムのように幾つもの器具が並ぶ部屋が現れた。
「走ったり殴ったりワイヤーを登ったり、俺たちは力仕事だからな。ここはNSB専用で二十四時間利用できる。君も使うといい」
「『俺たち』」
「新人くんはレディみたいに計画を練ったり、ハックみたいにハッキングしたりできないだろう。俺と一緒に現場潜入だって聞いてるぜ?」
聞き返した新人に、クラッシュは不思議そうな顔をする。
「ああ……」
クラッシュと。一緒に。現場潜入。
新人は頭を抱えたくなった。
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