後藤新から始まる恋

クライングフリーマン

後藤新から始まる恋

 ================= 基本的にフィクションです ============

 俺の名前は、後藤新(ごとう しん)。

 ありふれた名前なのだが、「あらた」と間違えて読まれてしまうこともある。

 友人は、「とうしん」と呼ぶ。

 予備校は関係無い。

「ねえねえ、とうしん。私が好きって言ったら嬉しい?」

「嬉しい。」

「ねえねえ、とうしん。付き合ってって言ったら、付き合う?」

「付き合わない。お前、髭、濃いから。スカート履きたいんなら、『永久脱毛』しろよ。」

「意地悪。私の気持ち知ってるくせに。」

「知ってる。だから気持ち悪い。」


 日向真子(ひゅうが まこ)は、小学校からの友人で、『立ちション仲間』である。

 よく女の子と間違えられる。

 担任の先生に聞いたことがあるが、両親が自分で区役所に届を出しに行かないと、出生届けの名前の『間違い』が起こる。

 性別は『男』で書いたが、『一文字じゃない、まこと』『誠実じゃない、まこと』と伝えているのに、『真子』になった。

 最近は、区役所の職員も、非正規雇用の外国人が多い。

 いや、最近じゃないな。20年位前からか。

 とにかく、名前の変更には、成人するまで(18歳)、親の承諾がいる。

 変な名前で通してきた位だから、いい加減な親だ。


 真子が、女装しだしたのは、別にジェンダーではない。

 親への反抗心だが、親は「いつ手術するのか知らないが、費用は出せないよ。」と言う。

 後2年の辛抱だ。長い目でみれば、あっと言う間だと担任の先生は言うが、高校は3年間しかない。

 対して、俺の両親は至ってまともなので、やつに同情して『まことくん』と呼ぶ。

 俺は、『ひゅうが』と呼んでいつが。


 学校では、流石に詰め襟学生服だが、通学はセーラー服だ。

 いつの間にか、『事情』は、生徒の間では『公然の秘密』になり、通学途中で担任以外の先生に出くわすと女子が庇ってくれる。


 生徒会長選挙が始まった。

 トップ当選は日向。

 公約通り、「制服の自由化」を学校に働きかけ、制服は自由になった。

 生徒会長は日向、副生徒会長は、俺、後藤新。

 多分、誤解していると思うが、俺はおんなだ。

 俺も、親の『我が儘』で奇妙な人生をスタートさせた。

 小学校の時出逢った俺は、日向に『立ちション』の仕方を教わった。

 無い。そうか。

 日向はセーラー服着たり詰め襟学生服着たりしている。

 俺は、念願の詰め襟学生服を着ている。


 有るとき、ムラムラしてラブホなるモノにお世話になった。

 日向は抵抗した。


 2年間、誰にも黙っていた俺達は、女子達に庇って貰って、学校にはばれず、退学には至らなかった。

 卒業後、2人は改名した。

 そして、結婚した。

 ジェンダーは俺の方だった。

 とても、濃い人生はこれからだ。

 夫婦別姓?ふざけんな!!

 俺は『日向新子』になった。『日向誠』の妻として。

 ダチのパートナーになったのだ。


 ―完―


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後藤新から始まる恋 クライングフリーマン @dansan01

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