嫌いな母が死んだ日 後編
母が倒れたそうだ、病院に駆けつけ主治医で母の昔からの知り合いだと言う先生に母の容体を尋ねてみた
「先生母の容体は?」
「残念ですが悪性の脳腫瘍で、すでに手のほどこしようがありません」
「そうですか・・・・」
私は、その足で母の病室に行った
「わざわざ来たのかい、自分の事は自分でやるから、あんたタカシさんのケツを叩いいて頑張りな」
「何でもっと早く言ってくれなかったの?」
「・・・・・」
それから程なく母は、脳腫瘍の影響で認知症となった。もう私の事もわからない
「母さん今日は着替え持って来たよ」
「どちらのお嬢さんですか?」
「もう、あんたの娘でしょうが」
「・・・・・・」
それから、一週間もたたず母は息を引き取った。
「芽依さん。これ・・・お母さんからの預かりものだよ」
そう言って主治医の先生から紙袋を手渡された。
中には銀行の通帳と一冊の分厚い日記が入っていた。
私は通帳を開いて見てみた。
なんとそこには、5000万もの貯金が私名義になっていた
「!!先生これ!?」
「芽依ちゃんお母さんは芽依ちゃんの為に少しづつお給料から貯金して芽依ちゃんのバイト代も一切手を付けずに頑張って貯めていたんだよ、旦那さんの保険金も一切手を着けず・・・娘の将来の為にと」
私は頭が混乱していた。
さっきまでは正直あの母がなくなって、ホットしていた所に思いもよらない話だった
「お母さんの日記を見たら分かるんじゃないかな?、お母さんからは死んだら処分するよう言われていたけど私にはそんな事、出来なかった。」
私は待合室で母の日記を読んで見た
●月●日
あの人が事故で居なくなってしまった。
息を引き取る直前迄私と芽依の事ばかり気にしていた
私はあの人の残してくれた芽依をしっかり育てて行くとあの人に誓った。
葬儀の日、私は病院で泣きつくし涙も枯れて出なかった。
芽依を強く立派に育てるとあの人の遺影に誓った。
●月●日
葬儀から暫くして私は仕事をすることにした、保険が入ったがこれは芽依の将来の為にも一円たりとも使えない
しかし芽依はまだ小さい、寂しいと甘えてくる私も芽依が心配だ
でも、これからも二人きりで生きていくのだ、ここは厳しく突き放した
胸が痛む・・・・
●月●日
芽依が誕生日だとお手伝い券をくれた、厳しく接した私に不満が有るだろうに、こういう優しい所はあの人そっくりだ・・・芽依も私から何を頼まれるのかと嬉しそうに待ち構えている・・・しかし
私は、こころを鬼にして芽依の将来の為に料理をさせたみた、わからないながら芽依は一生懸命作ってくれた、美味しかった
しかし私はちゃんと出来る様にと芽依に料理を続けてもらうことにした。
●月●日
高校生になった芽依はもう私より家事が上手くなっていた
あの人にも芽依の手料理食べてもらいたかった。芽依には色んな事を経験して自分のやりたい事を見つけて欲しかったが、私はバイトを通じ働く事の厳しさを早くから分かってもらうことにした。
ごめん・・・芽依やりたい事や習いたい事もあったろうに、ごめん芽依
●月●日
今日あまりに頭痛がひどく病院に行った。
悪性の腫瘍だった今手術しても助かる見込みは20%だと言われて私は初めて酒に逃げた。
そのせいで今日が芽依の卒業式の日だという事を忘れてしまっていた。
芽依ごめんね、母さん自分の事で一杯一杯になってた。だめな母親で御免なさい
●月●日
私は治療は諦め残りの人生全て芽依の為に働いて少しでも蓄える事にした、芽依の為なら死ぬことも怖くない・・・貴方、芽依の晴れ姿を報告できなくて御免なさい
そっちに行ったら、何度でも謝罪します
●月●日
今日芽依が彼氏を連れて来た、誠実そうな好青年だ
私は昔私の親があの人に言った事を、芽依の彼氏に言った
そしたら、あの人と同じ事をその彼氏が言ってくれた。
私は涙が溢れて来た、この人なら芽依をちゃんと幸せにしてくれる
私は安心してあの人の所に行ける。
勿論二人の交際を認めた。
ここで日記が終わっていた
「母さん・・・・何で・・・・何で・・私母さんに何も何も」
私は泣きながら椅子から崩れた。
その時日記の間から一枚の紙が落ちた。
昔母にあげたお手伝い券だ・・・そこにはこう書いてあった
「大好きな芽依、私が死んでも笑顔で見送ってね」
今日は母の葬儀、私の嫌いな母はもういない、
私を一番大切に想ってくれていた、大好きな母とのお別れだ
私は母に精一杯の笑顔でお別れをした。
母さん、母さん、これが私の精一杯の笑顔だよ見てる・・・口元は笑顔だが芽依の瞳からは止めどなく涙が溢れて来た。
「お母さん最後にようやく自分の為に、お手伝い券使ってくれたんだね。」
ありがとうお母さん
大好きだよ
嫌いな母親が死んだ日 nayaminotake @nayaminotake
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