第18話 遊び人連続殺人事件⑧
翌日の捜査本部で、スコーピオンズについての話題が出た。
「まあ、そんなことでこの畠山将司が捜査の指揮を執ることになったので、よろしく」
前で畠山が偉そうにあいさつする。
陰で小手川の部下がひそひそ話をする。
「え、今回畠山さんが指揮を執るのかよ」
「本多さん、畠山参事官はどんな人なんです」
大倉が尋ねる。
「東大法学部卒の超絶エリート様だよ。18歳で司法試験を一発合格したという噂だ。俺は正直苦手だな」
「えーと、まず例の監視カメラに写っていた人物は誰だ」
大倉が椅子を立ち、
「矢板剛士、海龍会の元組員です。今は何をしているかわかりませんが、とりわけ重要人物であることには間違いないでしょう」
「そうか、では容疑者のアリバイはとれたか。宮代警部さん」
「はい、荒川瑞穂は勤務先のキャバクラにいたことを客が証言していましたし、監視カメラにも映っていました。葛飾大和はあの時間ここから離れたゲームセンターの監視カメラにばっちり映っていて、北俊太は桃園第一ビルの清掃が映っていました。豊島洋一郎も工場の夜勤がありました。全員アリバイがあります」
「何全員にアリバイがあるのか」
畠山はマイクを持ちながら、驚いたように尋ねる。
「ええ、残念ながら」
肩を落とす本多の一方で、田崎はというと
「これで、矢板が金野を殺したという事実に一層信ぴょう性が増したわけだ。畠山参事官今すぐ抑えに行きましょうぜ」
「ああ、でもどこに潜伏しているのかなんてわかるのか」
「根城が分からないなら、自分から出てきてもらうだけです」
その日の深夜、三田町の路地に一台の真っ黒なワゴン車が止まった。
中には数人のむさくるしい男が入っていた。
その男たちはしきりに会話をしている。
「おい、坂堂の兄貴本当に連絡があったのか」
「ああ、俺も聞いた時には耳を疑ったがな。だが、こちらに利益があるなら関係ね」
「まあ、もしもの時のために隠れて仲間を待機させていますからね」
そんなことを言っていると、向かいから帽子を目深にかぶった男がやってきた。
若いほうの男が車を降りて、男に近づいていく。
「俺たちをここに呼んだのはお前か」
帽子をかぶった男は無言でうなずく。
「で、本題に移ろうか。物を渡せ。目的のものを得られれば俺たちはそれでいい」
すると、帽子をかぶった男は無言で右手の紙袋を渡した。
男はそれを半ば強引に受け取ると、帰っていこうとした。
その背中に向けて帽子をかぶった男が口を開く。
「いやあ、貴方に会えると思ってませんでした。海龍会組員三田啓介さん」
「まさか、お前サツか。まあいい、もしもに備えて、お前を人質にとる算段はできてんだよ」
そう、帽子の男を殴ろうとした。その瞬間、男の体は宙を舞った。
「この程度の実力で俺を人質に取ろうと思うとは、最近のやくざは見る目がないな。俺は、小手川進、神奈川県警捜査一課7係長だ」
男の体を一瞬で投げ飛ばしてしまった。小手川の様子を見て後ろの車の連中が勢いよく飛びかかってくる。
そこへ、どこに隠れていたのか。4課の刑事が飛び出してきて、あたりは大混戦。
小手川はとりあえず三田に手錠をはめたが、驚いたことに4課とやくざ連中の乱闘は混戦を極めているらしく、あたりに怒号が飛び交っている。
「できるだけ人のいない通りを選んだんだが、ここまでとは予想外だったな」
小手川はそう言い残すことしかできなかった。
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