第19話 遊び人連続殺人事件⑨

 取調室で、綿密に取り調べが行われることとなったが実質1課と4課の折半である。まあ、どちらの課でも厄介な取り調べであることに変わりはないが。


「貴様がリーダー格の坂堂光翔だな」


「そうだとしてどうする。俺をどうしようっていうんだ」


 小手川の取り調べに対し、余裕をもって答える坂堂。


「まあ、お前には例の大麻の密売や恐喝なんか多くの罪があるだろう。それで逮捕した」


「じゃあ、何で1課がやるんだよ。それは4課の坂巻の爺のところがやることだろうが」


 怒鳴り散らす坂堂に慌てることなく小手川は次の言葉を言う。


「まあ、落ち着け俺はお前に聞きたいことがある。その結果に寄っちゃ司法取引してやってもいい」


「何が聞きたい」


 坂堂は足を組みながら威圧的に聞く。


「俺が聞きたいのは矢板剛士の居場所だ。お前ら海龍会が匿っている可能性を考慮してな」


 すると、坂堂の態度が急に変わり


「矢板剛士?俺たちも丁度探していたんだよ。うちの金を持ち逃げした野郎を」


「持ち逃げですか」


 意外な展開に小手川が驚く。


「うちの組が儲けた金をあいつが持ち逃げしやがった。今こっちも全力で探してるんだ」


 坂堂は机をたたきながら言う。


「ああ、後大麻とか何とか言っているが、俺たちは殺された金野という男に何も頼んでないぞ。わざわざ堅気に頼むなら自分で運ぶわ。恐喝は本当だがな」


「じゃあ、矢板は単独行動しているということか」


「ああ、スコーピオンズは新興で俺たちも目をつけている。ただ、組織の実態がつかめね」


「確か、田崎もそういっていたな」


 海龍会が関わっていないなら、どこにいるのかと小手川は再び思案する羽目になった。


 その不安に会うかのように十橋が取調室に入ってきた。


「小手川さん。栄光寺前の監視カメラに矢板らしき人物が映っていました。どうやら、アパートに潜伏していたようです」


「そうか、分かった。坂堂さん、私はこれで」


「おい、捕まえたら一回面拝ませろ。言いてえことがある」


 その坂堂の声を無視し、小手川は西参道へパトカーを走らせた。




 そのアパートは築60年建っているような古ぼけたビルで街の大通りからは外れたところにある。脛に傷のあるもの潜伏するにはもってこいだろう。


「小手川さん。このアパートに男がいるんですね」


「まあな、このアパートには匿っている奴がいるはずだ。気を抜くなよ」


 そして、管理人から借りた鍵で部屋に入った一行だったがすでに遅かった。

 当の家主、矢板剛士は狭い部屋の中で死体となって横たわっていた。


 部屋の奥にある窓を見るとあけ放たれている。


「こりゃあ、参ったな。捜査が降り出しだ」


 小手川はその死体を見てそういうことしかできなかった。

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