第17話 遊び人連続殺人事件⑦
土井橋と坂巻の両名は鳥羽明憲刑事部長の住む、刑事部長室に入った。
中には鳥羽明憲刑事部長とその親友の畠山将司参事官が控えていた。
畠山将司は青縁の眼鏡をかけたすらっとした長身でオールバックの40代後半の男だ。
「今回、部長が君たちを呼んだ理由は他にない。例の麻薬売人の殺人についてより綿密な連携が取れるよう、発破をかけるためだ」
そう、畠山に厳しく言われた後、拍を置いて鳥羽明憲刑事部長が話し始めた。
「まあ、とりあえず現状何処までわかっているのか。お話しいただきたいですね」
「スコーピオンズです。今回も奴らがかかわっています」
「スコーピオンズかとんでもないのに手を出しているんですね」
鳥羽は驚いたように言う。
「え、そんなに意外ですかね。あいつらはこのあたり一帯に勢力を張っているんですよ」
「知っています。私も憂慮していて、少しでも勢力をそぎたいんですが。生憎上が」
花形部署刑事部の長として、一応上級公務員のはしくれとして他の省庁の大物にも知り合いの多い鳥羽が憂慮を示す。
「でも、今回の殺人事件の解決に必要で、麻薬がこれ以上広まるのも見ていられません」
「まあ、落ち着けお前ら。その為に刑事部長は呼んだのだ。今回の捜査の指揮を執るために」
そう、畠山は厳しく言い放った。
「生憎1課と4課で手柄の取り合いになるのは避けたいのでな。課長クラスより上の人間が指揮を執ることにした」
「まさか、鳥羽刑事部長が自ら指揮を執るおつもりですか」
「いや、俺だよ。この畠山将司が今回の捜査の指揮を執る」
「畠山参事官が採るんですか」
二人は驚いて参事官を見る。
「なんだ、俺が捜査2課の出だから不満か?これでも鬼の畠山とは言われたんだがな」
畠山はわざと首をかしげる。
そもそも、畠山将司は今こそ刑事部の参事官だが、かつて捜査2課長だった。
「いや、あんたの課長時代は刑事部の課長は鬼しかいないって、みんな不満げでしたよ」
土井橋がそう語ると、鳥羽が笑っていった。
「まあ、『剛腕の土井橋』『追い詰めの畠山』『粘りの武田』『強面の坂巻』で、警務部は慌ててましたよ。まあ、カッコいいんじゃないですか。ヒーローみたいで」
「俺だけ褒められてないですよ」
坂巻は不満げに言ったが、強面なことくらい毎日鏡を見て理解していることなので従った。
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