すりーぽいんと?

夕日ゆうや

スポーツの日

「お父さん。ぼくバスケをやりたい!」

「そうか。じゃあ、体育館行くか?」

 俺はしゃがんで息子のなぎに尋ねる。

「うん。いく!」

 元気よく返してくる凪。

 俺はその日のうちに車を出し、市民体育館に向かう。

 バスケットボールを借りると、そのままコートで遊ぶ。

「ぼく、大きくなったらバスケ選手になりたい!」

「そうかそうか。一緒に頑張ろう」

 俺は凪と一緒にバスケのドリブルの練習をする。


 一日ではやっぱりうまくならないか。

「お父さん。やっぱりバスケ止める」

「いいのか? やっと見つけた〝好き〟だろ?」

「でも全然うまくならない」

「あのな。テレビで見ている選手も、こんな苦労をたくさんしてきたんだ。凪がすぐにうまくなるなんて、カメとウサギの話みたいなものだ」

 自分でうまく説明できているか分からない。

 子育てが得意だとは思わないけど、でもここで退かせたら凪はなんでもすぐに諦めてしまう気がした。

 だから俺は凪に諦めない男になって欲しいと強く願った。

「いいかい。父さんもうまくないだろう?」

「うん」

 素直だなー。傷つく。

 まあ、そこが凪のいいところだ。

「だから、父さんの相手になってくれよ」

「……とくべつだよ?」

「ああ。ありがとう。凪もうまくなって父さんに教えてくれ」

「でも……」

「大丈夫だ。凪ならできる。自分を信じて」

 うまく子育てができているとは思えない。

 でも子どもには強くなって欲しい。

 だから頑張る意味を教えたい。

「きっと凪は格好いい人になれるから」

「ぼく、なれるかな……?」

「なれるさ」

 俺は優しく言うと、凪の手を握る。

「さ。帰りにアイスでも買おうか?」

「うん! ぼく、ハーゲンがいい!」

 教育方針は見直さないといけないかもな。

 母さんの料理に期待しつつ家路へとつくのだった。


                          ~完~

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