第4話 レベル詐称疑惑!? 俺たち、ギルドでまさかの飛び級候補

――街に着いた。


 道のりは長かった。

 いや、長いというか、ただ歩いただけだ。

 5日間、敵も出ず、イベントも起こらず、完全に徒歩RPG。

 足は棒、頭は空っぽ。心はただ「早く風呂入りてぇ」だった。


 ようやく辿り着いたその街は、石造りの建物が並び、人も活気に満ちている。

 だが俺たちの目にまず飛び込んできたのは――冒険者ギルドの看板。


「おおっ、本物のギルドだ!」

「やっぱ最初はここ行かなきゃ始まんねぇよな!」

 テンションだけは一流である。


 中に入ると、そこはまさに戦場前夜。

 筋肉でできたような男たちが酒を飲み、鎧の音を響かせ、明らかに修羅場をくぐった顔で笑っていた。


「みんな……強そうだね」俺が小声で言うと、

「基本、体デカいな」タクトが頷く。

「えっ、こんな人たちが冒険者なの? 私たち……やっていけるの?」

 ミミの顔が引きつる。


 全員、既に帰りたいモード。


 しかし逃げるわけにもいかない。

 俺たちは受付へ向かい、声を揃えた。


「初心者です! 冒険者になりたいんですが!」


 受付嬢は完璧な営業スマイルで頷いた。

「ようこそ、冒険者ギルドへ。それでは、まずステータスを測りますね。こちらの水晶に手をかざしてください」


 俺たちは順番に水晶に手を乗せた。

 すると――ピカーッと光り、数値が浮かび上がる。


 受付嬢が一瞬固まった。

 ……いや、ほんとに石像みたいに。


「……あの。皆さん、初心者……なんですよね?」

「はい!」俺たちは元気に返事。


「ええと、失礼ですが――全員、レベル20と出てますけど?」


「え?はい」

「……は?…はい」

「わぁ、やっぱりそうなんだ。」


 受付嬢は半ば引きつりながら記録紙を確認している。

 曰く――貴族の子弟で、幼い頃から剣と魔法を叩き込まれた者でも、18歳でレベル15が限界らしい。

 それを超えるレベル20。


 つまり俺たちは、常識外れだった。


「これは……逸材かもしれませんね」受付嬢が呟く。

「普段、冒険者ランクはFから始まりますが……お三方は、特例でDランクから昇格試験を受けてみませんか?」


 ――静寂。


 そして、爆発。


「えっ! 俺らそんなに才能あるの!?」

「やべぇ! 無双時代の幕開けだ!」

「夢ある~! これだから冒険者はやめられない~!」

心の声


 三人で浮かれる俺たち。完全に調子に乗っている。


 俺はわざと背筋を伸ばして、わざと声を低くした。

「初めはFランクからって聞いてたけど、最初っからDで始められるなら、ありがたい話だね」


 ……完全にドヤ顔である。

 ミミとタクトも後ろで妙に顎を上げ、『俺たち何か持ってる系』オーラを出し始めた。


「では、明日試験を受けに来ます!」

 調子に乗ったまま、俺は宣言した。


 その後、ギルドを出てすぐミミがはしゃぐ。

「私たちって、才能あるんだ~!」

「井の中の蛙って、俺たちのことだったんだな!(逆の意味で)」タクトも自信満々。

「……でもDランクって、もうプロの世界だから気を引き締めろよ」俺が一応注意しておく。


 その口で、次の瞬間――。


「よっしゃ、武器屋行くか! 例の剣、売っちまおうぜ!」


 ああ、やっぱり何も考えてねぇ。


 武器屋に入り、俺は包んでいた剣を差し出した。

「これ、売りたいんですけど」


 商人は一瞥して――固まった。

 そして次の瞬間、目を見開き、カウンターをひっくり返す勢いで叫んだ。


「お、お客様っ! こ、これは一体どこで!?」


 ……あれ?

 なんかまた、ヤバいフラグ立った気がするんだけど。

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