勇者・魔王((ここで糞を漏らしたらどうなるんやろ...))

@NinNin

ウン命の和解

世界の終わりを告げる鐘が鳴っていた。

 空は裂け、大地は焼け、天も地も悲鳴を上げる。

 10年続いた人魔戦争――その決着の時。


 勇者リキシールは、剣を構えていた。

 対峙するは、魔王ジャイニス。

 両者、満身創痍。もう一撃で決まる。


 誰もが息を呑む中、沈黙だけが支配する。

 ·······ただし、リキシールの心の中を除けば。


リキシールは腹の奥に鈍い痛みを感じていた。

昨夜、女神が笑顔で差し出した「女神特製 激辛カレー・オブ・ゴッデス」。

その名に偽りなく、胃の中で今も戦争を続けている。

(アカン···腹の中で女神がグルグルしとる····ここで漏らすわけには······いや)








 (ここで糞もらしたらどうなるんやろ……)


 あまりにくだらない。

 しかし緊張の糸が切れかけた頭は、なぜかそんなことを考える。


 “もし、今漏らしたら――魔王、ビビるんじゃね?”

 “いや、逆に伝説になるかもしれん。『最終局面で出した勇者』とか。”

“しかし、ここまで着いてきてくれたパーティメンバーはどう思うんやろか... ”

 だめだ、笑いそうになる。


背後の仲間たち――聖女ビデ

 戦士ペーパスが不安げに見つめる。


 「リキシール、顔が真っ赤よ!」

「勇者殿、まさか……気合いの入りすぎか?」

 「……ああ、出そうなんだ」

 「え、何が!?」

 「いや、いろいろ。」

 緊張のせいか、腹の奥がゴロゴロ鳴った。


 (……もう、出るな)

 



一方、魔王ジャイニスもまた、苦悩していた。


 「クク·······昨日の魔界スパイシーラーメンが効いてきおったか……」

“·······ここで、漏らしたら·······どうなるんだろうな。”

 “威厳、地に落ちるだろうな····でも、それもまた愉快かもしれぬ。”

“正直······同胞達が死ぬざまをもう見たくも無い···我は疲れた······”

 四天王のひとり、参謀ベンザが焦る。


 「魔王様!? 顔色が悪いですぞ!」

 「我は平気だ······少々、圧がかかっておるだけだ」

 「下·······方面に、ですか?」

 「黙れ。」






世界が静まり返る。

 雷鳴が鳴り止む。

 ふたりは、ほぼ同時に決断した。


 ――(もう、出したろ。)


 刹那。

 剣でも魔法でもない“衝撃”が、戦場を揺らした。


 ――ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!




沈黙。

 誰も動けない。


 「な、なに!? 今のは……地響き!?」

 「いえ……違います……魔王様の魔力でもありません……」

「これが勇者殿と魔王の……底力···か」


 勇者リキシールは顔を上げた。

 魔王ジャイニスも同じく。

 ふたりの視線が交差する。


 ――そして、笑った。


 「……お前、まさか」

 「……お前もか」

 「「ぶはははははははは!!!」」











 笑いの中で、ふたりは剣を下ろした。

 「なあ、ジャニス」

 「なんだ、リキシル」

 「もう、戦うの……めんどくさくね?」

 「……ああ。腹も空いたしな。」


 ふたりは顔を見合わせ、笑いながら頷いた。


 こうして十年戦争は、終わった。

 きっかけは神の奇跡でも、英雄の犠牲でもない。

 ただ、腹のうちを見せあっただけだった。


 後に人々はこの日をこう呼ぶ。


 「うん命の協定」

 ーー人魔、出すことで理解し合うーー


 その後、平和都市ウォシュレットが建設され、

 中心広場には二人の像が立つ。


 勇者リキシルと魔王ジャニス

 共に出し、共に笑う。


 今も子供たちはその下で笑いながら激辛カレーとスパイシーラーメンを食べる。

 それが、この世界の平和の証。




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