第2話 衝突
──その日の昼休み、春の香りが教室に充満している。
洋太たちは学食で食事を済ませて教室に戻ってきた。
大食漢の武田が話し出す。
「ここの学食、最高だけど量が足りないよな」
洋太と新井は首を横に大きく振っている。
そして洋太が武田に訴えた。
「いやいや、学生向けでかなり大盛りだぞ?安いし」
武田は納得がいっていないようだ。
「俺はあれの大盛りか特盛りが欲しいよ」
新井が呆れた様子でボソボソと一言。
「ごっつぁんです」
また、横の席でその話を聞いていた花梨が笑っている。
「もー、笑わせないでよ。食べたお弁当が全部逆流したら弁償してよね」
洋太たちは花梨の天真爛漫さに戸惑いながら武田が話す。
「か、花梨姫がそのような下品なことを……」
「ひ、姫?あはは、やめてよ」
洋太と新井は思っていた。
(いや、姫なんですよ、本当に)
4人は高校生活を満喫し始めていた。
―ドンッ―
その時、男女の集団5人が洋太の席にわざとぶつかってきた。
「おい、冴えない奴らって俺らだよな?」
柔道部の磯島がドスの効いた声で言ってきた。
取り巻きは同じ柔道部の田辺と宮下、そして女子2人はクラスでもかなり目立っている守口に真島だ。
柔道部の3人は背も高く恰幅もいい。女子2人は校則違反だと思えるくらいに派手だ。
どうやら昼休みの空いている時間を狙って洋太たちの所にやってきたみたいだ。
周りのクラスメイト達もざわつきながら息を呑み、様子を伺っている、
かなり動揺しながら洋太は話した。
「た、確かにさっき授業が始まる前に冗談でそういう話になって……」
その時、洋太は窓から入ってくる風がとても冷たく感じた。
慌てて武田は顔を青くしながら謝った。
「俺が何も考えなしに言ってしまって……ごめん」
武田は凄く反省して下を向いた。
新井は何も言わずに同じく下を向いている。
クラスの女子で1番目立っている守口が捲し立てる。
「冴えないってアンタ達でしょ、それにこの女、女子と話さないのに男にだけ媚び売ってあざといのよ」
花梨は悔しそうに唇をかみ締めている。
洋太はその言葉だけは許せなくて、掌を強く握りしめて強めの口調で言った。
「俺ら3人には何を言ってもいいけど、花梨ちゃんを悪く言うなよ!冴えないって話の時も花梨ちゃんは横で聞いてただけだし」
守口の次に女子で目立っている真島が蔑んだ表情で洋太を見ながら話し出した。
「あらー、好きなんじゃない?必死過ぎでしょ、こいつ」
それを聞いた磯島達は笑った。
「あはは、ダセー」
ずっと黙ったまま聞いていた花梨が堪えきれずに話し出した。
「もう、止めて!確かに冴えないとか言ったのは悪いと思うけど、これ以上侮辱するのはよくないよ」
それを聞いた磯島が、笑いながら手拍子をして音頭を取り出した。
「おー!両思い!両思い!両思い!」
磯島のグループの他の4人もそれを真似た。
「両思い!両思い!両思い!両思い!」
困惑する洋太たち。悔しさと、自分たちにも非があるので、あまり強く出られない複雑な心中で我慢するしかなかった。
磯島たちの煽る声は段々とエスカレートしていき、クラス中に響き渡っている。
だが、一人の男がこの空気を一変させたのだ。
「ガキか!!お前ら!!」
ざわついていた教室が一瞬で静まった───
とんでもない大声で新井が叫んだのだ。
"キーンコーンカーンコーン"
その時、丁度昼休みの終わりのチャイムが鳴った。
2000年からの恋文 七瀬 錨 @ika358369
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