好きだよ…





わけがわからなかった。


梨竹さんが泣いてるのも、ハグされたがってるのも、「みほさんはわたしの」って言われたのも…。


だって、梨竹さんが私を独占したがってるなんてありえないもん。

私は、梨竹さんのこと好きだから…大好きだから独占したいって思うけど、梨竹さんは…そんなことありえないはずなのに…。



でも――




ぎゅっ…



「…みほさん?」



私は梨竹さんを抱きしめた。

泣いてる彼女が、どうしようもなく愛おしくて…。わけがわからなくとも、私のことで泣いてることはわかる。その申し訳なさもあった。



「もう少しだけ…このままでいさせて」


梨竹さんが肩の上でこくんっと頷く。

そして、彼女の腕が私の腰に巻きつく。


ぎゅっ…と優しく強く抱きしめられる。





抱きしめながら考えていた。


もしかして梨竹さんも私のこと好きなのかな?

それともただハグしたいとか?

梨竹さんには、うまくいってないとはいえ彼氏がいるんだし、私のこと好きなはずがない。

でも、泣くほど私のことを思ってくれてたのかな…って。


私の中の、ポジティブな考えととネガティブな考えが交錯する。



本人に聞くしかないよね…

なんか今ならいけるかも。


よし…!




「梨竹さん…わ、私のこと好きとかあるのかな?」


変に緊張してよくわからない聞き方になってしまった。



……ん?



「えーっと、梨竹さん?」


「スー…スー…」




いや、寝てんのかいっっっ


勇気出して聞いたのに!

でも、こんなに密着していて、寝てることに気づかない私も私である。

自分の世界に入りすぎたかな?


まぁ、寝てしまったのなら仕方ない。

起こしてまで聞くようなことでもないし、気になるのは気になるけど…。



起こさないようにゆっくりと、梨竹さんをベッドに寝かす。



「…ふぅ〜」


起こさずに移動させることに成功した。

小柄な子とはいえ、ゆっくり動かすのは結構体力使うな〜と思いながら一息つく。






スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。


愛おしい――


その愛おしさが私の手を、彼女の方へといざなう。

綺麗な黒髪をまとう彼女を撫でる。




「好きだよ…」


自然と溢れ出た言葉。

ずっと伝えたいと思っている言葉だ。

私にもっと勇気があれば、彼女に伝えてたのかな…。




ほんのり赤く染まる頬に手を添える。

彼女の唇に視線を落とす。




柔らかそう…



この先のことをしてしまってはいけない気がして、そっと目線を逸らし手を離す。






「だめだな…わたし…」



ポツリと呟く。


かわいい後輩の規則正しい寝息が響く部屋に、私の言葉は静かに溶けていった。









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