第9話 年越し

12月31日

街の賑わいで今日は年末だと気づいた。

私の町は毎年年末に花火上げている今日もその花火が高くきれいに

打ち上げられるのだろう。

去年は私の家族と大翔の家族で見に行ったっけ。

今年は病院の窓からギリギリ見えるかな。

10.....9......8.....7....6...5..4..

心の中で数えた。病室で一人外を眺めて

1。

花火が上がった。扉が開いた

「間に合った!!!」

ドーン!!

私は花火なんかより、扉の前に立つ大翔の顔を見た

花火の光に照らされていつもより明るく見える大翔の顔は

花火なんかより何倍も美しく見えた。

息を切らして私の元に来てくれた大翔は

「あけましておめでとう」と「今年もよろしく」と

言っていた。

入院して初めて年を越した、私は後2年で死んでしまうのかと

そう思ってしまった。

でも、花火を見る大翔を見ていてまだ生きていたいって

この先も大翔と過ごしたいって思えたんだ。

花火の音よりも大きく感じた私の心音が大翔に聞こえていないか

私は不安だった。


1月1日

私が目を覚ますと大翔は寝ていた。

寝顔を見つめていたら、つい触りたくなっちゃって

頬を指でつついた起きる様子はなくきっと疲れているんだと感じた

昨日は気付かなかったけど大翔の手に炭の汚れがついていた

居酒屋でのバイトでついたのだろう。

今日はせめてゆっくり寝ていて欲しい。

そう思いながら私は寝顔を眺め続けた

昼頃だろうかママとパパが来た。

まだ寝てる大翔を起こさないよう二人と話をした。

疲れた顔を見せない大翔に二人は感謝している様子だった

ママは大翔にブランケットをかけ

また来るねと部屋を後にした数時間経過した頃だろう大翔は目を覚ました

慌てている姿が可愛かった。

幸せだった。

少し大翔と話をした後大翔は帰宅した


1月13日

私の体調が徐々に回復していると先生に言われた

完治とは言わないがこの先も生きていけるかもしれないと

延命治療が功を奏したのかな。そう感じていた

大翔も大喜びしていた、ママもパパも泣いて喜んでいた

希望が見えた。私はありがとうと伝えた。


そこからしばらく検査を続けて3月も後半に差し掛かっていた

外はだんだん暖かくなり桜のつぼみも芽を出し始めていた。

これから私の生活はどうなるのか不安もあったけど

きっと大丈夫だろう。

また大翔と学校に通って色んな場所に行きたい

そんなことを考え今も生きている。

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