第8話 本心

気づけば11月になっていた

私は今まで以上に大翔を意識している。

私の気持ちを伝えるべきか今になって葛藤が起きている。

どうすればいいんだろう。


11月10日

大翔の身長がちょっと伸びてる気がした

顔立ちも前より大人っぽくてかっこいい。

大人になってるんだなって実感する。

私はどうなんだろう。

車椅子に乗ってトイレに向かった。

酷い顔だった。見なければよかったと後悔している

顔はすこし青白く、頬も少し痩せ始めていた。

最近はあまり食欲がわかない原因はそれだろうか。

こんな顔でも大翔は好きだと言ってくれてるのかと思うと

無性に泣けてきた。

私は心で決めた。

元気な顔で大翔に会いたいと。

その日から結衣は食事をしっかり行った。

初めはゼリーなど食欲がなくても喉を通せるものからゆっくりと

次第に病院の食事も喉を通るようになり

12月24日

クリスマスイブ大翔とケーキを食べる結衣は元気な顔をしていた

褐色がよく頬もこけていない。かわいらしい顔に

大翔と楽しく笑っていた夜の空には輝く星

二人は何故だか空にうかぶ人影を見た気がした。

「サンタさんじゃない!今の」私は指をさして叫ぶ

「今、絶対居たよな!!!」私以上にはしゃぐ大翔

昔みたいに子供のような顔をする大翔を見た私は本音をこぼしてしまった

「すき.......」

慌てて口をふさぐ結衣は大翔を見る

大翔は外に夢中で聞いていなかった。

くやしい気持ちもあったけど私は肩を下ろした。

こんな時間がいつまでも続けばいいのに

そんなことを考えながら私も空を見上げた。

聖夜に響く街の音はとても心地の良い音で私を夢に誘う

クリスマスを知らせるベルの音が私の頭に流れて癒しを与えてくれる

雪が降り始めた。ホワイトクリスマス

私は今日も生きている。

サンタさんどうか大翔に幸せを届けてください。

とてもいい子なんです。先の無い私のために身を削っている大翔に

幸せを。

涙を流し寝言を呟く結衣の涙を

大翔は指で拭う。

「そんな事ない、俺は今幸せだ結衣。おやすみ」

結衣は笑った。

来年も必ず一緒にクリスマスを過ごそうと大翔は置手紙をし家に帰る。

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