第3話 将来の夢

4月20日

病室に心地良い風が入ってきた。

私の長い黒髪を温かい春の風が撫でる、今日も大翔はお見舞いに来てくれた。

「なぁ、結衣。俺決めたんだ」

大翔はおもむろに話し出した

「俺がんばって医者になるからさ、結衣も頑張って耐えてほしい。まだ時間はかかるけど大学に行って絶対結衣の病気を治すから。約束だ」

高校1年生余命は約3年。大翔も知っている、無理だよ私のために頑張らなくていいんだよ、自分のやりたい事探して自分を優先してよ。大翔。

そう言いたかった、でも大翔の真剣な目をみて純粋にうれしかった。

そんな自分が嫌い。

「余命って目安だろ?絶対に3年経ったら死んじゃうわけじゃないんだろ?ならさ、頑張るしかないだろ!」

大翔の励ます声、仕草、顔。本当に大好き。

でも伝えない、きっと悲しい思いをさせてしまうから。

私のせいでつらい思いを引きづってほしくない。

でも、私は。。。。。。。。伝えたい、だからせめて日記に書いてしまっておこう。


マンションの一室に響く嗚咽。

「うぅ。なんで言ってくれないんだよ。俺も大好きなんだ結衣。今でもずっと、、、、」

流れる涙を拭い次のページに進む


4月25日

今日は調子が良い。

いつもは病室のベッドだけど今日は先生に許可を得て病院の中庭にきた

久しぶりに外の空気に触れた気がする。

今日はまだ大翔は来ていない、なにをしているんだろう。気になる

特に書くこともないから少し昔の事でも書いておこうかな。

私が幼稚園の頃初めて大翔と出会った、昔から体が弱くて外で遊ぶことも少なかった私は、公園で遊んでる子たちが羨ましくて親に黙って外に行ったんだ

それから公園で遊んでる子たちに声をかけようと思ったんだけどうまく話せなくて

「なんだお前!話せないならこっちにくんなよ!」「きもちわり!!」

そんな風に男の子達にバカにされたんだよね。その時助けてくれたのが大翔。

3日前に隣に引っ越してきた子がいるって聞いてたんだけど、まさか大翔がその子だとは思わなかったよね。最初は怖かったけど、大翔の優しい笑顔とか見てる内に私も心を開いて気づけばいつも一緒に居たんだ。

隣人だったこともあって親同士の付き合いもあったし。

楽しかったな。

大翔には言ってないけど小学校1年の時、私の将来の夢大翔のお嫁さんだったんだよね。今は絶対に言えないけど今でもなりたいって思ってる。

もっとちゃんとした体で生まれてこれたら。なれたのかな。なんて思っちゃった。

でも、ぱぱとままを恨んでない。むしろ迷惑かけちゃって申し訳ないと思ってる。

子が親を選べないのと同じで親もまた子を選べない。こんな子に生まれてごめんなさい。日々そう思ってしまう。

あ、大翔が来た。

今日は本屋さんの紙袋持ってる、漫画でも買ったのかな。

大翔は転んだ。派手に転んでてかわいいなと思った

紙袋からはみ出た本は漫画ではなかった。

医学部入試の参考書とか医療に関する本。目に見えるだけでも5冊はあった。

まさか、本当に私を治す為に。やめてよ大翔私のために無理をしないで。

きっと間に合わない。

4月29日

今日はね大翔と少し喧嘩しちゃった。

大翔は少し忙しくなるから会いに来る回数が減っちゃうって。

私は聞いたの「勉強?」

大翔は頷いた。

「やめてよ!どうせ間に合わないんだから。私とお話しする時間増やして。そっちの方が私幸せだもん。あ。ごめん」

言いすぎちゃった。後悔しても遅いよね。私のために頑張ろうとしてくれているのにわがままばかり。

でも、なんでそこまで頑張ってくれるのかわからない。

私のために苦手な勉強もして医者になろうなんて。

どうしてなんだろう。

今日はもう寝よう、大翔はきっとしばらく来ないだろう。

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