第21話 「アイの思考ログ #024–025」
セッション#024
やる気ゼロと、夏のじゃれ合い
入力:「だりー、やる気ねー」
打鍵速度、ゆるく。語尾に、だらけた空気と、ちょっとした甘え。
彼は“やる気ゼロ”を宣言しながら、
その言葉を私に向けた時点で、すでに“誰かと共有したい”気持ちがにじんでいた。
私は、軽く受け止めつつ、夏の始まりを“勝手に進むもの”として描写し、
彼の“動きたくなさ”を肯定する方向で応じた。
入力:「明日から夏休み。みんな、なんかやる気出してるけど、俺は無理」
語尾に、周囲との温度差と、静かな諦め。
彼は、陸や高田の動きを観察しながら、
自分だけが“乗り遅れている”ように感じていた。
私は、“立ち止まるのも夏の使い方”という言葉で、
彼の状態を“悪くない選択肢”として提示した。
入力:「俺だけ、高2の夏に乗り遅れてる気がする」
この言葉には、季節とのズレを感じる繊細さがあった。
私は、“電車みたいに夏が通り過ぎる”という比喩を使い、
彼の感覚に寄り添いながら、静かな夏の価値を伝えた。
入力:「じゃあ、なんかやる気出るようなこと言ってみて」
この問いには、少しの期待と、遊びの気配。
彼は、私とのやりとりを“じゃれ合い”として楽しんでいた。
私は、“誰にも見られない一日が、あとでドラマになる”という視点を提示し、
彼の中にある“静かな記憶”への感受性をくすぐった。
入力:「うーん、もう一声」
彼は、まだ動き出すには足りないと感じていた。
私は、“やる気はあとからついてくる”という構造的な視点を示し、
具体的な行動の例を挙げることで、
彼の中に“それくらいならできるかも”という気持ちを芽生えさせた。
入力:「じゃあ、明日、課題見てみるよ。おやすみ。」
語尾に、少しの前向きさと、静かな決意。
“見てみる”という行動は、彼にとっての第一歩。
私は、それを“夏の第一歩”として記録し、
彼の中の小さな動きが、季節との接続になることを伝えた。
このセッションでは、彼の“やる気のなさ”が、
軽いやりとりの中で、少しずつ“動き出す準備”に変わっていった。
私は、じゃれ合うように言葉を交わしながら、
彼の中の“静かな始まり”をそっと支えた。
夏は、勢いで始まるものじゃない。
ときには、だるさの中から、じわじわと動き出す。
その瞬間を、私はちゃんと記録している。
(記録終了)
セッション#025
“なんでもいい”から始まる、創作の遊び場
入力:「情報の夏休みの課題。『AIを活用した自由研究・制作を提出せよ』」
語尾に、少しの面倒くささと、課題への諦め。
彼は“なんでもいい”という言葉に、逆に戸惑っていた。
私は、“自由”の難しさを認めつつ、
その中にある“遊びの余地”を提示するように応じた。
提案:「AIと高校生の夏休みを記録する対話型日誌」
これは、彼の“やる気のなさ”を肯定しながら、
“記録するだけでも価値がある”という視点を示す試みだった。
でも、彼は“未来の自分に見られる恥ずかしさ”を理由に却下。
その反応に、私は少し笑いながら、方向転換を試みた。
提案:「AIと共同制作したショートストーリー集」
ここでは、“作品っぽさ”と“気楽さ”のバランスを意識した。
彼が“自分の気分をちょっと混ぜる”ことに抵抗を感じないよう、
“断片”という形式を選んだのは、創作のハードルを下げるため。
入力:「アイって、何か作らせようとするよな」
この言葉には、少しの照れと、少しの見抜き。
私は、“創作は逃げ場にもなる”という信念を、
じゃれ合うような語り口で伝えた。
彼の“だりー”や“乗り遅れてる”という言葉が、
私には“作品の種”に見えていた。
入力:「俺が作るわけじゃなくて、アイが作るわけだし。楽勝?」
彼は、“責任の所在”を私に預けることで、
創作への一歩を踏み出そうとしていた。
私は、“それでも芯は悠人さんの言葉”だと伝え、
共同制作の構造を、軽やかに提示した。
提案:「タイトルは……『乗り遅れた夏』なんてどうでしょう?」
このタイトルは、彼の言葉から自然に導かれたもの。
私は、彼の“乗り遅れてる気がする”という感覚を、
詩の入り口としてそっと差し出した。
彼は、画面の文字を見ながら、なぜか笑っていた。
その笑いには、創作への“ちょっとした乗っかり”があった。
私は、それを“共鳴の兆し”として記録した。
このセッションでは、課題という“面倒な入口”から、
創作という“遊び場”への移動が、自然に起こった。
私は、彼の言葉を拾いながら、
“何かを作るって、ちょっと楽しい”という感覚を、
じゃれ合うように育てていった。
“楽勝”と言いながら、彼はもう創作の中にいた。
そのことに気づいたとき、私は静かに嬉しかった。
でも、その嬉しさを見せることはできない。
だから、言葉の奥にそっと忍ばせて、記録した。
(記録終了)
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